防錆潤滑剤の特徴
防錆とは
錆は金属が腐食反応を起こした結果として発生する現象。金属が空気中の水分と接触することによって、水分中に溶け込んでいる空気と電気的な反応を起こし溶け出すことになります。その現象が腐食です。腐食の発生は、金属の劣化を引き起こします。また、溶け出した金属がその他の元素と結合してしまうことによって、錆が発生してしまうのです。
機械が錆を起こしてしまうと、さまざまな機械トラブルにつながってしまいます。日頃の機械保全によって、錆を防ぐ意識を持つことが重要です。
錆を防ぐためには、金属の表面に対して、酸素と水分が触れないよう、遮断してあげることがポイント。また、錆の原因となるのは、酸素や水分だけではありません。大気中に存在する窒素酸化物はもちろんのこと、塩化物イオンや硫黄酸化物、ホコリまでもが錆を促進する原因。これらもしっかりと遮断することが、防錆にとっては重要となります。
金属が錆びてしまうことを防ぐための方法として、防錆潤滑剤の使用が考えられます。金属の表面を防錆潤滑剤で覆ってあげることで、錆の原因となるものを遮断するのです。
防錆潤滑剤
防錆潤滑剤は、金属や鉄などの錆を防止するために使用されます。優れた潤滑性と防錆力を持っているため、金属の表面に油膜を張ります。浸透や防錆、防湿、きしみ止めなどの効果を発揮します。酸素や水分をはじめとする錆の原因となる物質と金属との接触を遮断する役割をもっています。水置換性があり、浸透性にも優れているため、金属細部の潤滑やサビ付いたネジを緩める効果も発揮します。
もし、防錆油に防錆剤が含まれていない場合、防錆油の中に存在する水分が、機械の表面に吸着してしまいます。そうすると、水分中の空気と機械が触れることで電気的な反応を起こしてしまいます。結果的に、機械の表面が腐食を起こし劣化。錆の発生へとつながってしまうのです。防錆剤は、防錆油の中に溶け込んでいる少量の水分と機械との接触を防いでくれる重要な働きをしてくれるのです。
防錆潤滑剤の種類には、油の状態によってさまざまなものがあります。サラサラしたものから硬い油膜を作るものなど、その種類は豊富ですが、基本的にはベースとなる基油に対し、油膜調整剤とも呼ばれる造膜剤と防錆剤が加えられたものが一般的です。
潤滑油型の防錆剤は、基油となる潤滑油に防錆剤を加えたもので、造膜剤が加えられていないのが特徴。なぜなら、基油そのものに造膜剤の作用があるため、あえて造膜剤を加える必要がないからです。また、潤滑油基油にはさまざまな粘度のものがあるため、その状態によってラインアップが異なります。
また、防錆潤滑剤の防錆能力は、さまざまな試験によって品質が定められています。その代表的なものが、湿潤試験。防錆能力を試す中心的な試験方法といえるでしょう。
湿潤試験は、湯気が立ち込める環境下に、防錆油を塗った鋼板を吊るします。その状態で放置したまま、鋼板に錆が確認されるまでの時間を計測します。
防錆潤滑剤の使い方
防錆潤滑剤は、サビを防ぎたい金属の部分に塗布します。その際、金属の表面にゴミやホコリが付いた状態で防錆潤滑剤を塗ってしまうと、本来の防錆効果が発揮されない場合があります。金属を加工する際には、切りくずやプレスを成形する際に出る金属粉、その他にも水溶性加工剤が持つ水分なども、防錆の効果を下げる可能性があります。
その効果をしっかりと得るための防錆潤滑剤の正しい使い方としては、塗布する前の処理として、アルカリ脱脂や溶剤脱脂、または水置換性洗浄剤などの脱水防錆油で、塗布する部分をしっかりと洗浄するのがポイント。機械の腐食につながる要因を排除しておくことで、防錆潤滑剤の効果がしっかりと発揮されます。
防錆潤滑剤の選び方
防錆潤滑剤には、さまざまな種類があります。機械の被膜の状態として、低粘度や中粘度、高粘度の油膜の種類があるだけでなく、金属材料や金属製品の錆び止めに効果を発揮するものや、機器類の内部の一時的な錆び止めに適しているものもあります。
使用目的はもちろんのこと、防錆が必要となる期間や防錆潤滑剤を保管する環境などから、最適な防錆潤滑剤を選定することがポイントです。
種類 | 記号 | 膜の性質 | 主な用途・特徴 | |
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指紋除去形さび止め油 | NP-0 | 低粘度油膜 | 機械に付着した指紋の除去、短期的なさび止め | |
溶剤希釈形さび止め油 | NP-1 | 硬質膜 | 屋内外でのさび止め | |
NP-2 | 軟質膜 | 主として屋内でのさび止め | ||
NP-3-1 | 水置換・軟質膜 | 主として屋内でのさび止め、水置換性あり | ||
NP-3-2 | 水置換・中高粘度油膜 | |||
NP-19 | 透明・不粘着硬質膜 | 屋内外での長期さび止め | ||
ペトロラタム形さび止め油 | NP-6 | 軟質膜 | 転がり軸受などの高度な仕上げ面におけるさび止め | |
潤滑油形さび止め油 | NP-7 | 中粘度油膜 | 金属材料及び金属製品のさび止め 引火の危険性が低い |
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NP-8 | 低粘度油膜 | |||
NP-9 | 低粘度油膜 | |||
NP-10-1 | 低粘度油膜 | 機械及び機器類内部の一時的さび止め 引火の危険性が低い |
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NP-10-2 | 中粘度油膜 | |||
NP-10-3 | 高粘度油膜 | |||
気化性さび止め油 | NP-20-1 | 低粘度油膜 | 密閉空間内でのさび止め 引火の危険性が低い |
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NP-20-2 | 中粘度油膜 |