工具の通販モノタロウ 溶剤・酸、アルカリ用手袋 溶剤手袋の種類と選び方

溶剤手袋の種類と選び方

溶剤手袋は使用している材質によって種類と特徴が異なります。数万種とも言われる化学溶剤から人体を守るためには、その溶剤に対して変化の少ない手袋を使用しなくてはなりません。以下を参考に、溶剤や作業環境に合わせて最適なものを選定しましょう。

溶剤手袋とは

溶剤手袋とは、有機溶剤や油などの汚染から手を保護する手袋のこと。ヤケドや傷といった危険有害因子から人体を守る防護手袋のうち、化学薬品からの防護に特化した手袋を指します。そのため「化学防護手袋」と呼ばれることもあります。

溶剤手袋の目的は化学物質の透過・浸透を防ぐことです。たとえ目に見えなくても有害な化学物質が皮膚に直接接触すると、皮膚の損傷や発がんなど様々な健康障害が生じてしまうかもしれません。それを防止するのが溶剤手袋であり、その規格は主にJIS T 8116によって規定されています。使用されている業種は幅広く、化学工場や薬品工場、メッキ加工や部品洗浄など、有機溶剤を液体または気体で取り扱う様々な現場で用いられます。そのため溶剤手袋に用いられる材質は多種多様。扱う溶剤や作業条件により、適切な溶剤手袋の選定が必要です。

皮膚損傷や発がん性のある有機溶剤による事故を防ぐためには、扱う有機溶剤に適した手袋を選定する必要があります。ではどうやって最適な溶剤手袋を選定すれば良いのか、「手袋の種類」「扱う溶剤」「手袋の素材」という3つのポイントから見ていきましょう。

 

手袋の種類から選ぶ

溶剤手袋には、大きく分けて「耐透過性タイプ」と「耐溶剤性タイプ」の2種類があります。どちらの性能を重視するか、扱う溶剤や作業内容に合わせて選定しましょう。

耐透過性タイプ

溶剤を通さず、しっかりと人体を保護するタイプです。透過とは、溶剤が分子レベル(気体)で手袋の素材を通り抜けてしまう現象のこと。耐透過性タイプの手袋は、分子レベルの溶剤も通しにくい素材・加工を採用しています。

レベルは耐透過性試験によってクラス分けされており、クラスの数字が大きくなるほど溶剤が手袋を通り抜けるのに時間がかかる=耐透過性が高いとされているので、選定時の参考にしましょう。たとえば作業時間が長い場合は、クラスの大きい手袋がおすすめです。

主な素材はクロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム(バイトン)、ネオプレンゴム、CSM、EVOHなど。特定化学物質に登録されている第1類・第2類の一部の溶剤を扱う現場で使用されます。

溶剤手袋の種類と特徴

耐溶剤性タイプ

溶剤に対して手袋自体が劣化しにくいタイプです。溶剤によっては手袋の劣化が早まり、変形や穴・ひび割れを起こして溶剤が染み込む可能性があります。耐溶剤性タイプの手袋は素材が物理的な変化をしにくいため、耐劣化・耐浸透に効果的です。ただし耐透過性は高くなく、分子レベルでの透過には対応できません。

主な素材はポリウレタン、ニトリル、シリコーンなど。特定化学物質第1類・第2類以外の透過性が低く、発がん性の低い溶剤を扱う現場で使用されます。

 

溶剤から選ぶ

溶剤の性質によって適合する手袋が異なります。1種類の溶剤のみを扱うなど用途がはっきりしている場合は、以下を参考に手袋の素材を決定してください。

ガソリン・軽油

最適な素材は、耐油性の高いニトリルゴムやフッ素ゴム。クロロプレンも充分使用に耐えます。反対に耐油性の低いブチルゴムはおすすめできません。

ベンゼン・トルエン

適合素材が少なく、耐薬品性・耐熱性の高いフッ素ゴムが唯一おすすめです。


アルコール

ゴム製の手袋であれば、いずれの素材も適しています。耐水性の低いプラスチック製のポリビニルアルコール(PVA)などは不向きです。

ケトン

耐ガス透過性に優れたブチルゴムが最適な素材です。シリコーンゴムも充分に使用できます。


酢酸エチル

溶解力の強い有機溶剤に対応しているシリコーンゴムや、ブチルゴムが良いでしょう。

有機酸

極性溶剤に使用可能なブチルゴムがおすすめ。耐溶剤性のあるシリコーンゴムも適しています。


高濃度無機酸

耐透過性の高い素材がおすすめです。特にブチルゴム、CSM、フッ素ゴムなどが向いています。

低濃度無機酸

耐透過性の高いブチルゴム、CSM、フッ素ゴムに加え、クロロプレンも適しています。


高濃度アルカリ

耐アルカリ性に優れたブチルゴムやクロロプレン、CSM、また耐溶剤性に優れたシリコーンゴムなどがおすすめです。反対に強アルカリで劣化するフッ素ゴムはおすすめできません。

低濃度アルカリ

耐アルカリ性に優れたブチルゴム、クロロプレン、CSMが最適です。耐溶剤性に優れたシリコーンゴムも良いでしょう。

 

素材から選ぶ

手袋に使われる素材の特徴を把握することで、より的確に溶剤を取り扱えるようになります。以下、素材と適合する溶剤をまとめました。

耐透過性タイプ

ブチルゴム

耐ガス透過性に優れた素材です。気密性が高く、ガスや蒸気を通しません。太陽光や温度変化にも強く、耐オゾン性もあります。極性溶剤にも使用可能。ただし耐油性は低く、芳香族有機溶剤・塩素を含む有機溶剤には対応できません。

ブチルゴム

  • 得意な溶剤
  • ケトン、酢酸エチルなど
  • 苦手な溶剤
  • ガソリン・軽油、ベンゼン・トルエンなど

クロロプレン(ネオプレン)ゴム

耐透過性、耐熱性、耐摩耗性、耐オゾン性があり、全体的にバランスの取れた素材です。耐酸、耐アルカリ、耐油性もあります。寒所ではやや硬くなります。

クロロプレン(ネオプレン)ゴム

  • 得意な溶剤
  • アルカリ溶剤、低濃度無機酸など
  • 苦手な溶剤
  • ベンゼン・トルエン、酢酸エチル、有機酸など

CSM(ハイパロン)

クロロスルホルン化ポリエチレンゴムのこと。クロロプレンゴムと似た特性を持っており、耐老化性、耐オゾン性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れています。高濃度の無機酸にも対応可能。弱酸性です。ただ低温では結晶化しやすくなります。

CSM(ハイパロン)

  • 得意な溶剤
  • 酸、アルカリ溶剤など
  • 苦手な溶剤
  • 酢酸エチルなど

フッ素ゴム(バイトン)

耐熱性、耐薬品性、耐候性に大変優れており、特に耐熱性は300℃の高温にも耐えられます。耐油性もあり、ガソリンにも使用可能です。

フッ素ゴム(バイトン)

  • 得意な溶剤
  • ベンゼン・トルエン、ガソリン・軽油など
  • 苦手な溶剤
  • ケトン、酢酸エチルなど

 

耐溶剤性タイプ

ニトリルゴム

耐油性に優れている点が大きな特長です。また耐摩耗性、耐老化性が高く、突き刺しにも強く丈夫なため、手袋素材として一般的に用いられています。

ニトリルゴム

  • 得意な溶剤
  • ガソリン・軽油など
  • 苦手な溶剤
  • ケトン、酢酸エチル、有機酸など

シリコーンゴム

耐熱温度は200~250℃、耐寒温度は-50~-70℃と、耐熱性・耐寒性に優れた素材です。圧縮復元力に優れ、粘付きのあるものの取り扱いが得意なほか、特定の溶剤に対応します。

シリコーンゴム

  • 得意な溶剤
  • アセトン、アルコールなど
  • 苦手な溶剤
  • ガソリン・軽油、ベンゼン・トルエンなど

 

まとめ

化学薬品や油から人体を守るには、どの手袋でも良いというわけではありません。溶剤の種類や作業環境に合わせ、最適な素材・特長の溶剤手袋を選定する必要があります。透過性の規格を参考に、防護服やマスクと同じレベルの手袋を選びましょう。

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