転がり軸受の種類と特徴
回転や往復運動をする機械には、部品に荷重がかかります。その荷重を支える重要な役割をする軸受。軸受の代表的な種類には、「玉軸受」と「ころ軸受」の2つがあります。それぞれ異なる特徴や性能を持っています。
ここでは、代表的な2つの軸受と、軸受にかかる荷重の種類について解説します。
玉軸受
転がり軸受の種類のひとつ、玉軸受の主なラインアップは以下の通りです。
- 深溝玉軸受(6200番台など)
- 単列深溝玉軸受は、転がり軸受の中で最も代表的な形式です。
- ラジアル荷重のほかに、両方向のアキシアル荷重を負荷することが可能です。
- 摩擦トルクが小さく、高速回転する箇所や低騒音、低振動が要求される用途に適しています。
- アンギュラ玉軸受 (5200番台など)
- ラジアル荷重と一方向のアキシアル荷重を負荷することが可能です。
- 玉と内輪・外輪とは接触角を持っています。接触角が大きくなるほど、アキシアル荷重の負荷能力が大きくなり、接触角が小さいほど、高速回転に有利な特徴を持っています。
- スラスト玉軸受(51100番台など)
- 単式スラスト玉軸受の場合、一方向のアキシアル荷重を受けられます。
- 転動体の形状や使用用途によって、さまざまな形式の軸受があるのが特徴です。
- 一般的には許容回転速度が低く、潤滑には注意を要します
- 自動調心玉軸受 (1200番台など)
- 外輪の軌道は球面で、その曲率中心が軸受中心と一致しているため、内輪、玉、保持器は軸受中心の周りを自由に回転でき調心性があります。
ころ軸受
ラジアルころ軸受
- 円筒ころ軸受(N、NU、NJなど)
- ラジアル荷重の負荷能力が大きいのが特徴です。
- 転動体と軌道輪のつばと摩擦が小さく、高速回転に適しています。
- 針状ころ軸受(NK、HKなど)
- 大きなラジアル荷重が負荷でき、剛性も高く、慣性力が小さいため揺動運動にも適しているのが特徴です。
- 円すいころ軸受(30200番台など)
- ラジアル荷重と一方向アキシアル荷重を負荷することができ、接触角が大きいほどアキシアル荷重の負荷能力が大きいとされています。
- 自動調心ころ軸受(22200番台など)
- ハウジングに対する取り付け誤差や、軸たわみによる内輪と外輪の傾きがある場合にも使用が可能です。
- 負荷能力が大きく、振動・衝撃荷重を受ける用途に適しています。
- スラスト自動調心ころ軸受(29000番台など)
- たる形の転動体を使用したスラスト軸受で調心性のある軸受です。
- スラスト負荷能力は非常に大きく、アキシアル荷重がかかっている場合、多少のラジアル荷重を負荷することができます。
- ころ端面、保持器など滑り面が多く、低速回転でも油潤滑が必要です。
- スラスト円筒ころ軸受(K8など)
- 円筒ころを用いたスラスト軸受で、アキシアル荷重のみを受けることができます。
- 高荷重の用途に適しており、アキシアル剛性も大きくなります。
- スラスト針状ころ軸受(AXKなど)
- 保持器付き針状ころを用いたスラスト軸受で、一方向のアキシアル荷重のみを負荷することができます。
- 軌道盤に削り出し品を使用した軸受と鋼板のプレス品を使用した軸受とがあり、プレス品は断面高さのもっとも小さい軸受で、かつ負荷容量は大きくなります。
軸受けユニットとは
玉軸受ユニットは、玉軸受をさまざまな形をしたハウジングの中に組み入れたユニット商品です。機械の主な部品を構成するユニットとして標準化されています。
ハウジングをボルト締めで機械に取付け、軸は簡単に止めねじで内輪に取付けることができるのが特長で、軸受周りを設計する必要なしに回転装置を支持することが可能です。また、機械や側壁に取り付けることが簡単なのも、軸受ユニットの特長のひとつです。 ピロー形やフランジ形など、ハウジングの形によってさまざまな形のハウジングが標準化されています。
ラジアル荷重とアキシアル荷重、スラスト荷重
転がり軸受が受ける力には2種類あります。
ラジアル荷重
- 軸に対して上下方向に受ける力を「ラジアル荷重」と呼び、主にこの力を受けるベアリングのことを「ラジアル軸受」と呼びます。
- ラジアル軸受は自動車のタイヤ部分や新幹線の車輪などに使用されています。重量のある車体を支えながら回転しているものがラジアル軸受と覚えておきましょう。
アキシアル荷重またはスラスト荷重
- 軸と同じ方向に作用する力を「アキシアル荷重またはスラスト荷重」と呼び、ショベルカーの旋回部分や車のトランスミッションなどに使用されています。 ショベルカーをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、旋回部分の付け根には軸に対して同じ方向の力がかかっています。これがアキシアル荷重です。
まとめ
こういったように、受ける力の方向によって、転がり軸受は使い分けがされています。どういった方向の力を受けているのか、それに対して最適な転がり軸受はどのタイプかをイメージしてみてはいかがでしょうか。