金属素材の種類と選び方
金属素材とは
さまざまな金属製品や部品などの原料になる金属で、日本工業規格によって成分や強度などが細かく決められています。それぞれの金属素材は細分化を図るために、金属や製品規格を表すアルファベットと種類や含有量を示す数字による材質記号を用いて区別されます。たとえば、炭素が0.50%含まれた鉄ならSteelのSと0.50%の50、それにcarbon(炭素)のCでS50Cと表記されます。
金属素材の種類と選び方
金属素材を選ぶには、まず必要な材質を選び、次に使用したい部位に合わせた厚みのものを選ぶようにします。
材質で選ぶ
金属を使用した加工製品の原料となる金属素材には、さまざまな種類があり、加工の容易ささや熱処理による性質変化など特徴に違いがあります。
鉄(スチール)
もっとも汎用性の高い金属素材で加工性にすぐれ、溶接も容易です。価格が安く含まれている炭素量が少ないため、焼き入れによる強度が期待できないSS400と、焼き入れによる強度の上昇が見込めるS50Cなどがあります。
特殊鋼
工具などに使われることの多い特殊鋼には、熱処理しやすいSK3、耐摩耗性、被削性にすぐれたSKS3、靭性にすぐれたSKH51、熱処理のあとの変形が少ないSKD11などがあります。
プリバードン鋼
プラスチックを成型する金型などに使われます。強度、耐摩耗性、非切削性にすぐれたDC53、溶接性にすぐれたPXA30、ゆがみが少ないNAK55、鏡面みがき性が高いNAK80などがあります。
アルミ
導電性が高く熱伝導率にもすぐれている特性を持っているのがアルミです。切削性にすぐれたジュラルミンや高い強度をほこる超々ジュラルミンもアルミ合金に分類されます。
ステンレス
耐食性・溶接性にすぐれており、磁力に反応しないSUS304や、加工性は高いものの耐食性が若干落ちるSUS303などがあります。
砲金
銅・亜鉛・鉛・すずからなる合金で耐圧性、耐摩耗性、被削性に高い耐性を持っています。
銅
純度99.9%以上の含有率で耐食性、耐候性に特化したタフピッチ銅があります。
真鍮
配線機器などに用いられることの多い真鍮は、銅と亜鉛の合金でC2801という材質記号で表記されます。
チタン
強度、加工性ともに高い数値を示しているのがチタンです。熱交換器をはじめ、食器や装飾品など多岐にわたって利用されています。
厚さで選ぶ
一般的に、金属材質の厚みが増えれば加工はしづらくなりますが強度は増します。鉄の切板の場合だと厚さ5mm前後から日本人男性の標準体重(67kg)を支えられます。ステンレスの場合は7mm、アルミの場合は20mm程度の厚みが必要で、素材によって強度は大きく変わってくるのです。
加工方法で選ぶ
金属素材は、加工方法で選ぶこともあります。加工方法には、大きく分けて素材の金属を回転させて加工する旋削加工と素材を固定して工具を回転させて加工する転削加工があり、前者の代表が旋盤加工、後者の代表的な方法がフライス加工となっています。
旋盤加工
バイトとよばれる刃物に回転する素材を当てながら旋削する加工方法で、汎用旋盤やNC旋盤を用いて加工します。NC旋盤はコンピューターで制御されていて複雑なデザインの加工でも常に一定の水準で仕上がるメリットがあります。
フライス加工
対象物の表面だけでなく、穴あけや溝削りなど複雑な作業ができる加工法です。汎用フライス、NCフライス、マシニングセンターなどがあり、それぞれ得意な加工方法に違いがあります。
切断方法で選ぶ
金属素材の切断方法には、レーザー加工機やワイヤーカットといった方法があります。
レーザー加工
レーザー光によって、切断を行います。従来の手段では切断できない金属の加工や切断が可能です。ただし、レーザー光での切断は、ゆっくりと線をあてるために時間がかかります。切断できる素材の厚さもワイヤーカットより短いなどのデメリットがあります。
ワイヤーカット
ワイヤーカットは、水中に素材を沈め電流を流すことで放電爆発を発生させ、その熱量で対象を溶かしながら切断する方法です。切断時に発生する温度は7,000度にもなりますが伝導性のある素材であればどのような金属にも対応できます。また高精度で切断加工ができ、誤差は0.005mm単位で計測できるほどです。また、熱の力で溶かして切断するためバリも出ず、複雑な形にも対応できるのです。
金属素材には、特性や硬度によってさまざまなものがあり、日本工業規格によって細分化されています。金属素材を選ぶには、目的や用途に応じて、材質、厚さ、加工方法、切断方法の違いなどから選ぶといいでしょう。