プレス加工のトラブル対策
抜き加工におけるトラブル
プレス加工の代表的な加工に抜き加工があります。ここでのトラブルの原因や対処法を見ていきましょう。
素材(ブランク)を型どおりに打ち抜く抜き加工では、クリアランスや加工圧力の設定を慎重に行わなければなりません。抜き加工製品の断面は、パンチ側(上側)から順に、だれ、せん断面、破断面、バリで構成されますが、なるべくだれ・バリ・破断面が小さいものが理想の抜き加工といえます。 バリとだれはパンチとダイの摩耗により抜き精度が下がることで大きくなりますので、機械の劣化に注意することである程度調整することが可能です。
スクラップ(抜き加工によって出たクズ)が散乱して機械に挟まったりすると、機械停止や製品のキズの原因となります。スクラップの受け皿を機械に設ける場合もありますが、スクラップを散乱させずにまとめて処理できるので便利な反面、受け皿が溢れていることに気づかずに運転を続けてしまう危険もあるため、注意が必要です。
曲げ加工におけるトラブル
プレス加工における最もシンプルな加工といえる曲げ加工。曲げ加工においては、どのようなトラブルがあるでしょうか。
曲げ加工では、パンチに押さえこまれたブランクが、ダイの肩に沿って滑ることで変形が始まります。この時、曲げ始めにかかる一番大きな力がブランクにかかり、ダイの肩の部分にブランクが擦れることでキズとなりますが、このキズはダイの肩を丸めることで防ぐことが可能です。
曲げ加工では、曲線の内側では素材の圧縮の力が、外側では伸展の力が発生しています。この力が素材の限界に近くなったり、または超えたりすることが、ブランクの曲げ線部分に割れが起こる原因です。 これを防ぐには、曲げ半径を大きくする方法があります。また、しわや割れはフランジ成形などでも発生することです。
曲げ加工では、加工が終わってパンチとダイから製品が離れた後に、曲げた部分の角度が大小に変化する場合があります。これをスプリングバックといい、製品の寸法精度に大きな影響を及ぼす現象です。 スプリングバックを軽減するには、パンチとダイのプレス圧力とは別に、曲げ変化を受ける部分に補助的な外力をかけることで加工の安定性を増すことができるでしょう。
絞り加工におけるトラブル
大きなものから小さなものまでさまざまな製品に活用される絞り加工ですが、絞り加工においてもさまざまなトラブルが存在します。
絞り加工は、平板のブランクを筒状のダイに押し込んで容器状の形状に変化させる加工です。そのため、ブランクには部分によって引張や圧縮の力が働き板厚は大きく変動します。したがって、しわや割れが発生しやすい加工といえるでしょう。 安定した製品形状を得るためには、パンチとダイの肩の形状や大きさ、クリアランスを工夫して緻密な機械設定を行うことが一番の近道です。
一枚のブランクに短時間で大きな外力をかける絞り加工では、板厚変化がネックとなってきます。圧縮を受けるフランジ部分は板厚増加し、材料が引っ張られるパンチ肩の部分は板厚が減少するためです。寸法精度安定のためには、製品全体で均一な板厚となることが望ましいので、しごき絞りを用いて板厚を整えます。
成形加工におけるトラブル
細かな加工の多い成形加工では、バランスの良い製品作りに工夫が必要です。
浅い形状で凹凸を造形するエンボス加工では、エンボス形状が複雑になればなるほど平面度を均一に保つことに注意が必要となってきます。エンボス加工は、材料を張り出すことで引き伸ばし、伸びを利用してエンボス形状を作る技法です。 このとき、材料移動が生じるため平面が乱れることになります。これを防ぐには、製品をしっかりと押さえて材料の移動が起こりにくくすることが大切です。
プレス加工はさまざまな部分で活用されている加工ですが、活用範囲が広ければ広いほど、技術は発展し、それに付随して問題も発生してきます。金型の設定、機械の設計からじっくりと試行錯誤し、それぞれの問題にしっかりと対処していくことが重要です。