遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-10 ポンプのウォーミングと冷却水

4-10-1 ポンプのウォーミング

少しの時間も送液を止められない重要なポンプでは、予備機を設けると安心です。2台のポンプを並列で設置して、どちらか一方のポンプを運転します。そして、そのポンプの調子が悪くなったら停止させて、他のポンプを運転します。

このような重要なポンプで高温液を扱う場合、予備機はウォーミングしてすぐ始動できる状態にしておく必要があります。ウォーミングの方法は、図4-10-1に示すように、運転中のポンプAの吐出し側からバイパスさせて設けたウォーミング配管を使って、ウォーミングオリフィスを介して、予備のポンプBへ高温の液を流します。 同図で白抜きの弁は「開」、黒塗りの弁は「閉」にします。ポンプBを運転しポンプAが予備機になる場合、弁の開閉が逆になります。

図4-10-1 ウォーミングの方法

図4-10-1 ウォーミングの方法

ウォーミングは予備機をすぐ始動できるよう状態にしておくために必要ですが、他にも必要な場合があります。 一般に液温が120 ℃を超える場合、ポンプ内に一気に規定の高温液を入れてしまうのではなく、1分間に数℃ずつ液温を上げていき、羽根車、主軸、ケーシングなどをできるだけ均一な温度にして、 ポンプを始動可能な状態にします。 熱膨張の差によってケーシングが割れるのを防止したり、ポンプ内の上下で起こる温度差による曲りなどが起きないようにしたりするために、ウォーミングが必要になります。


4-10-2 冷却水

軸受、スタフィングボックス、メカニカルシール用クーラーなどに冷却水を供給する必要がある場合、効率よく冷却するための目安として、配管内の流速及び冷却水入口と出口の温度差があります。これらは、

配管内の流速:1.2 から2.5 m/s 冷却水入口と出口の温度差:最大20 K(℃)

になります。つまり、流速を上記の範囲に調整し、温度差が20 K以下になるようにするのですが、流速が分からないときは、温度差だけで調整します。 よくあることですが、冷却水量が多過ぎて温度差がほとんどないときは、冷却水量を少なくします。 図4-10-2に配管用炭素鋼鋼管を使ったときの、配管径1/2’’及び3/4’’の冷却水の流量に対する流速を参考として示します。

冷却水は必要があって供給するので、ポンプの運転中に何らかの支障があって供給されない状態になることを避ける必要があります。冷却水を供給するためには冷却水ポンプが必要です。また、その供給配管の途中にフローリレーなどを設けて、冷却水が流れていないことを検知する安全装置が必要になります。

図4-10-2 冷却水配管の流速

図4-10-2 冷却水配管の流速

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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