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建築設備配管工事の基礎講座
空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第3章 配管の接合方法の種類

3-5 配管用炭素鋼鋼管(SGP)の溶接接合法(中編)

(4)不活性ガスアーク溶接法

「不活性ガス溶接法」とは、アーク溶接部を「アルゴン」のような「不活性ガス」で包み、完全に空気を遮断して溶接する接合方法で、「TIG溶接」と「MAG溶接」が代表的なものである。空調・衛生設備配管などでは、前者の「TIG溶接」が採用されている。

図-1 不活性ガスアーク溶接(TIG溶接)の原理

空調・衛生設備配管などの「手溶接」では、一般プラント配管に比べ、小口径管(65A〜300A程度)を扱う場合が多く、管内面からの溶接が不可能なことにある。

したがって、「片面溶接(管外面からの溶接)」でも、管内面に欠陥のない健全なビードを形成する「裏波溶接」をしなければならないからである。

【技術用語解説】「ビード」と「裏波溶接」

1.ビード(bead):建築用語では、断面が小さな円弧をなす「モールディング」のことで、日本語では「玉縁」という。溶接用語では、溶接作業において溶着部分にできる帯状の盛り上がりのこと。

2.裏波溶接(penetration welding):「ルート間隔(後述)」を突き抜けて、溶接面の裏側に「溶接ビード」を形成させるような溶接方法。

図-2 「ビード」と「裏波」

一般に溶接作業姿勢は「下向き姿勢溶接」が望ましいにもかかわらず、空調・衛生設備配管施工の現場では、非常に狭いパイプシャフトのような場所や横走りの固定水平管の溶接作業が多いため、「全姿勢溶接作業」が要求される。

このため、裏波を安定して出せる「D4316」などの低水素系に属する、「裏波専用溶接棒」の使用や全姿勢で比較的裏波を出せる「TIG溶接」が不可欠である。

(5)鋼管の切断と開先加工および形状

鋼管の切断方法は、ねじ配管の場合と同様で、管軸に対して「垂直」に切断する。ただし、溶接接合をする場合には、鋼管切断後に「溶接品質」を向上させる目的で、管端にさらに「開先加工」を施す必要がある。

【技術用語解説】「溶接用開先加工」と「ドン付け開先」

溶接接合配管では、配管同士や継手を接続する場合には、どうしても管端を「開先加工」して接続する必要がある。造船業界などでは多種多様な「開先加工(grooving・beveling)」が採用されているが、建築設備業界の溶接配管用の代表的な開先には、1.V開先加工、2.レ開先加工、3.I開先加工(通称:ドン付け開先加工)の3種類がある。

3.の「レ開先」とは、開先形状がカタカナの「レ」に似ているためにつけられたネーミングである。垂直に管切断された鋼管をそのまま溶接継手に溶接する場合、溶接継手の端部には、継手メーカですでに「ベベル加工」が施されているので、必然的にこの「レ開先溶接」となる。ところで、この中で3.の「ドン付け開先加工」は、通常「突合せ溶接」として使用され、管軸に垂直に切断された「管端同士」を「突き合わせた状態」のままで、溶接接合するものである。

ちなみに、英語では「突合せ溶接」のことを“Butt Welding”と呼んでいるが、“Butt”とは“銃の台尻”のことである。誰が「ドン付け」というネーミングを考案したのかは不明であるが、筆者は素晴らしいアイデアだと感心してしまう。

この「ドン付け開先溶接法」は、文字通り解釈すれば、“ルートギャップ(ルート間隔)=0”の溶接法であるが、この場合”首の皮一枚だけ繋がっている”状態で溶接強度は極端に低くなってしまうので、その採用は極力回避すべきである。したがって、やむを得ずこの開先を採用する場合には、「溶接裏波」を出すためにも、適切なる「ルートギャップ(ルート間隔)」を確保する必要がある。

ちなみに、ルートギャップ(ルート間隔)間隔とは、被溶接体同士の間隔のことで、溶接接合の品質確保をする上で重要な項目である。

図-3 溶接部分の開先形状とドン付け開先の問題点

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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