建築設備配管工事の基礎講座
空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第6章 配管に関するトラブル対応

6-2 配管の腐食問題入門

配管のトラブルで最も多い事例は、「金属材料配管」による「腐食の問題」である。

(1)配管腐食とは?

腐食(corrosion)とは、鉄を例にとれば鉄が「酸化」することである。腐食とは、一般的にいうと「金属」と「それを取り巻く環境」との「化学的」あるいは「電気化学的」な相互作用のことで、その結果部分的または総体的に金属が「性能」を変えるか、「変化」を伴うことを意味する。元来、金属は「結晶粒」・「結晶粒界」・「不純物」などが表面に存在し、その金属に接した「溶液」でも「濃度差」・「温度差」・「隙間の有無」などの「環境差」が存在したときには、金属表面に「局部電池」を構成し、図-1に示す様に「陽極部」から「陰極部」へ溶液を通して電流が流れて「陽極部」が腐食される。これを「湿食」といい、金属が直接腐食性の気体と反応することを「乾食」という。一般的には、「湿食現象」が多いのでこれを「腐食(コロージョン)」という。(JIS Z 0103)

図-1 金属の腐食反応
(2)配管材料と環境

実際の問題となる配管腐食は、配管材料の種類と使用法(組合わせ)と環境(水質・温度・流速など)の組合せで生じる。これは、金属材料が地肌を水中に出している初期だけであって、表面腐食による「生成物」と水中からの「沈殿物質」によってカバーされるからである。この被膜がどの程度安定か、またこの被膜が上述の二つの反応:「金属のイオン化傾向(図ー2参照)」と「金属から電子を奪う反応」をどれだけ抑制するかは、「化合物の種類」と「水質」に依存する。

図-2 金属のイオン化傾向(亜鉛と鉄の関係)
【豆知識】金属のイオン化傾向

金属元素の原子には、電子を失って「陽イオン」になりたい性質、すなわち「酸化しやすい性質」があり、イオン化のしやすさの傾向の度合を「金属のイオン化傾向」と呼んでいる。金属によってその度合いは異なり、鉄・亜鉛などの腐食しやすい金属(卑な金属)は、「イオン化」が大きく、銅・金などの金属(貴な金属)は「イオン化傾向」が小さい。なお、金属を「イオン化傾向」に従って系列化したものを「電位列」、または「ガルバニック系列」と呼んでいる。ちなみに、表-1は、金属の「イオン化傾向」(卑な金属⇒貴な金属)を一覧化したものである。

表-1 金属のイオン化傾向(卑な金属⇒貴な金属)

いずれにしても、「腐食」は、その腐食の結果の「生成物」によって腐食が抑制されていることが一般的である。このことは、初期の「全面腐食速度」が次第に低下していることでもわかる。「ステンレス鋼」や「チタン」のような強固な被膜が最初から存在する金属材料では、「水質(塩化物イオン)」と「温度」が腐食を支配する。また、環境中の金属から電子を奪う役目をする「酸化剤(通常は酸素と残留塩素)」の濃度と「補給速度」が「全面腐食」と「局部腐食」の起こりやすさを決める

なお、水中からの「沈殿物」による被膜で、最も重要なのは「炭酸カルシウム(CaCO3)」である。この被膜は、金属から電子を奪い妨げる性能のよい被膜で、この被膜生成の可能性は、「ランゲリアの飽和指数(LSI)」として知られている。

(3)全面腐食と局部腐食

腐食が配管材料表面全体に進行する腐食を「全面腐食」、一部分だけに生じる腐食を「局部腐食」と呼ぶ。腐食が「全面腐食」のみの場合は、一過性配管の「飲料水」などの配管に使用される場合を除いて、問題になることはない。

設計時に配管に「腐食しろ」を見込んで「肉厚」を決定すればいいからである。多くの場合問題となるのは「局部腐食」である。

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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