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機械部品の熱処理・表面処理基礎講座
機械部品にはいろいろありますが、その多くは熱処理によって機械的性質を制御されています。さらに表面処理を適用すれば、表面には新たな特性が追加されて高性能・長寿命化は当然であり、付加価値も飛躍的に高まります。
本講座(全8章50講座)では、機械部品に用いられている金属材料(主に鉄鋼材料)の種類と、それらに適用されている熱処理(焼なまし、焼入れなど)および表面処理(浸炭・窒化処理、めっき、PVD・CVDなど)について、概略と特徴を紹介します。
第8章 機械部品の損傷と調査法

8-6 ミクロ破面の観察による破壊形態の確認

破面のミクロ観察は通常走査型電子顕微鏡によって行われています。破壊には結晶粒界に沿って亀裂が進行する粒界破壊と結晶粒内を進行する粒内破壊があります。

1.粒界破壊の破面

粒界破壊によって生じる破面形態には種々の破面が存在しますが、その多くはぜい性破面です。最も一般的な破面は図1に示すように、結晶粒界に沿った比較的単純な形態をしており、他の破面に比べて見分けがつきやすいのが特徴です。結晶粒の粗大化、水素ぜい化や応力腐食、低温ぜい性や焼戻ぜい性による割れなどは、この形態のことが多いようです。また、延性破面の場合は粒界破面上にディンプルが、疲労破面の場合は粒界破面上にストライエーションが観察されます。

図1 一般的な粒界破面

図1 一般的な粒界破面

2.粒内破壊の破面

粒内破壊の破面は、その種類によって特徴的な模様を呈しています。その特徴としては、延性破面であればディンプル、ぜい性破面であればリバーパターン、疲労破面であればストライエーションなどが観察されます。

(1) 延性破面

延性破面が生じる場合には、破面の周辺には伸びや絞りなどの塑性変形をともなうことが多く、破壊機構としては図2に示すような微小空洞の合体の様相を呈します。空洞の合体はディンプルとよばれ、その空洞の核になるものは析出物や非金属介在物です。したがってディンプルの大きさは、これらの大きさや間隔によって決まるものであり、ディンプルの深さは基材の延性が高いものほど深くなります。

図2 粒内破壊(ディンプル)

図2 粒内破壊(ディンプル)

(2) ぜい性破面

ぜい性破面が生じる場合は、破面の周辺には塑性変形は観察されません。ぜい性材料の破壊の場合は当然生じるものであり、たとえ延性材料であっても衝撃的な応力負荷、低温領域での破壊、切欠き部からの破壊などの場合にもよく生じる破面です。このときの破面形態は図3に示すように、結晶粒のへき開面であるへき開ファセットとリバーパターンから形成されています。しかし、実製品の破面は図4に示すように、不鮮明なリバーパターン模様の場合が多く、これは擬へき開破面と呼ばれています。

図3 粒内破壊(へき開破面)

図3 粒内破壊(へき開破面)

図4 粒内破壊(擬へき開破面)

図4 粒内破壊(擬へき開破面)

(3) 疲労破面

ミクロ的な疲労破面の特徴は、図5に示すように連続的に平行したしま模様が観察されることです。このしま模様はストライエーションとよばれ、負荷される応力の1サイクル単位で形成されたものです。したがって、このストライエーションの間隔や本数を測定することによって負荷された応力の大きさやき裂の進展速度を推定することもできます。

図5 粒内破壊(ストライエーション)

図5 粒内破壊(ストライエーション)

また、破壊によって生じたものではありませんが、疲労破面のなかにタイヤトラックとよばれる模様が形成されることもあります。タイヤトラックとは、破面の相対する側の硬質の介在物や突起などが連続して押し付けられて形成された模様のことです。この模様は図6に示すように、タイヤの跡に似通っていることからタイヤトラックまたはキャタピラの跡にも似通っていることからキャタピラパターンともよばれています。

図6 粒内破壊(タイヤトラック)

図6 粒内破壊(タイヤトラック)

執筆:仁平技術士事務所 所長 仁平宣弘

『機械部品の熱処理・表面処理基礎講座』の目次

第1章 機械部品に用いられる材料

第2章 鉄鋼製品に実施されている熱処理の種類とその役割

第3章 機械構造用鋼の焼入れ・焼戻し

第4章 ステンレス鋼とその熱処理

第5章 非鉄金属材料とその熱処理

第6章 機械部品に対する表面処理の役割

第7章 機械部品を対象とした主な表面処理

第8章 機械部品の損傷と調査法

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