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機械要素の基礎講座
多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 歯車

1-11 差動歯車装置のはたらき

歯車は減速装置や増速装置のほかにも、さまざまな活用法があります。 差動歯車装置は、2つ以上の運動の和や差を検出して、1つの運動にして出力する歯車列であり、古くは古代中国に伝わる仙人が常に南を示す指南車が知られています。その後、自動車などにも搭載されることとなり、英語でディファレンシャル・ギヤとよばれることから、デフギヤやデフなどとよばれることもあります。

例えば自動車が直進しているとき、前輪の2つのタイヤは等速で回転していますが、カーブを曲がるときには、2つのタイヤはどのように動くでしょうか。もし、一本の軸の両端にタイヤが取り付けられていたら、カーブを曲がろうとしたときのタイヤの移動距離は、内側の車輪よりも外側の車輪の方が大きくなります。 これを内輪差といい、このとき内側のタイヤはスリップしてしまいます。これでは自動車の走行性に影響してしまうため、差動歯車装置が考案されました。これは2つのタイヤの軸の間に図に示すようなリングギヤとサイドギヤ、ピニオンギヤを配置したものです。

自動車が直進している場合には、外側のリングギヤから加えられた動力は左右のタイヤに伝達され、サイドギヤとピニオンギヤに直結されることで、2軸は等速回転をします。すなわち、2つのタイヤは等速直線運動をすることになります。一方、カーブを走行する場合には、内側の車輪よりも外側の車輪の方が大きく移動するため、高速で回転します。 例えば、自動車が左折をする場合、左側の車輪は右側の車輪よりもゆっくりと回転するため、かかる負荷は大きくなります。 そのため、左側の車輪につながる歯車は回転しにくくなり、ここで差動が生じて、ピニオンギヤが回転をはじめるのです。このはたらきによって、左側の車輪はゆっくりと、右側の車輪は早く回転することになり、結果として左側の車輪はスリップすることなく、スムーズな左折を行うことができることになります。

このように優れたはたらきがある差動歯車装置ですが、車輪の片側が氷上でスリップしたり、溝に落ちたりして無負荷状態になったときに車輪を空転させてしまうという欠点があります。この問題を解決するために考案されたのが差動動作に制限をもたせた差動制限装置(リミテッド・スリップ・デフ=LSD)であり、各種の方式があります。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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