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第1章 機械要素の基礎講座

1-14 歯車の強度設計(2)歯の歯面強さ

歯車の強度設計にはルイスの式のほか、歯の歯面強さの視点から導かれた関係式があります。これは19世紀の終わりにハインリヒ・ヘルツが導いた弾性力学の関係式を歯車の接触応力にあてはめたものです。具体的には歯面を円筒面として考え、かみ合った接触部の面圧を計算します。この関係式はヘルツの式として、現在でも歯車の強度設計に幅広く用いられています。はりの曲げ強さから導いたルイスの式と異なるのは、ヘルツの式は歯車がかみ合うとき、歯面に加わる力とそれによって生じる接触応力に注目したことです。

例えば、歯を曲げ強さから計算したときに強度面で心配がないとしても、先に歯面が摩耗したり、ピッチングとよばれる剥離などによって損傷が生じることを検討しておくのです。細かく分類すると、ピッチングには使用後まもなく歯元に発生する初期ピッチングと初期運転期間を過ぎてからもピッチングが歯面に進行する破壊性ピッチングとがあります。また、歯の表面からでなく、内部におけるせん断力を起点として表面に向かってき裂が進展するスポーリングという現象もあり、最悪の場合には歯が折れることにつながります。ここでは歯の歯面強さの概要を紹介します。

ピッチング

歯面に生じる許容接触応力は式【1】で表されます。ここで、Fは回転力としてはたらく円周力、bは歯車の歯幅、dは小歯車のピッチ円直径、uは2枚の歯車の歯数比、ZHは領域係数(圧力角が20度のときには2.49)、ZEは材料の縦弾性係数による定数係数、KAは使用係数、KVは動荷重係数、SHは歯面強さに対する安全係数です。式【1】を円周力Fについて解くことで式【2】が得られ、ここから歯車に加えることができる最大の力を求めることができます。

式

実際には、式【1】や式【2】の文字に該当する具体的な数値を代入して計算を代入して、歯車の強度設計を行います。数式は複雑に見えますが、規格表などから条件に合う数値を探して代入するだけで、計算は計算機で行えばよいため、それほど難しくありません。興味をもたれた方は、機械設計便覧などを読んで、実際の計算を学んでください。

ところで、曲げ強さから導いたルイスの式と歯面強さから導いたヘルツの式のどちらの計算を採用すればよいのでしょうか。一般的には、硬さが大きく、ピッチングによる損傷が生じにくい場面にはルイスの式を用い、硬さが小さく、歯車の接触が多くなる長時間運転する機械の歯車で摩耗やピッチングによる損傷が生じやすい場面にはヘルツの式を用います。

執筆: 宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授