機械要素の基礎講座
多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第3章 歯車

3-1 ばねのはたらき

代表的な機械要素であるねじや歯車と同じように、ばねも私たちの身のまわりでたくさん使われています。ばねは本格的な機械の内部のみならず、洗濯ばさみやノック式のボールペン、乾電池の留め具など、日用品の中にも数多く見つけることができます。

ばねの代表的なはたらきとして、外から力を受けて変形したとしても、力を取り除くと元に戻ることがあげられます。これをばねの復元力といいます。洗濯ばさみはこのはたらきで洗濯物をつかんでいるのです。 なお、ばねに加える力と変形の関係を理解するためには、荷重と変形の間にある関係を把握しておく必要があります。物理を学んだことのある方ならば、ばねと言えば「フックの法則」を思い浮かべる方もいるでしょう。 これは「ばねの伸びは引く力に比例するという法則」です。ばねに加える荷重が一定の大きさ以内ならば、ばねにつるすおもりの大きさが2倍、3倍になれば、ばねの伸びも2倍、3倍になり、荷重を取り除くとばねは復元力で元の長さに戻ります。

力を加えて変形させた後、力を取り除くと元に戻るはたらき

ここでフックの法則を式に表してみます。ばねに加える力の大きさをF [N] 、ばねの伸び縮みの長さを x [m] この関係はF = k?x[N]で表されます。ここでk は、ばね定数と呼ばれる比例定数であり、この関係を一次関数で表したときのグラフの傾きを表します。 すなわち、ばね定数kが大きいほど、これを伸ばすために大きな力が必要になるのです。

次にあげられるのは、ばねがエネルギーを蓄えて徐々に放出することができることです。このエネルギーを特に弾性エネルギーといいます。ぜんまいはばねを巻くことでエネルギーを蓄えて、徐々にエネルギーに変換することで、おもちゃなどを動かします。 また、時計の動力源としても使われています。なお、エネルギーを放出するときに、ばねは一定の振動数でしばらく振動を続けます。これはばねの種類によって固有の値をもつため、ばねの固有振動数と呼ばれます。弾性エネルギーや固有振動数なども物理がベースとなっています。

弾性エネルギーを蓄積して放出することで運動を取り出すはたらき

さらにばねには外部から加えられた衝撃を吸収して和らげるはたらきがあります。このはたらきは自動車やオートバイ、鉄道などの乗り物において、路面の凹凸を車体に伝えないようにするサスペンションなどに用いられています。 ここに用いられるばねには、コイル状のばねとは似ても似つかない板状のばねや、油圧や空気圧などで衝撃を和らげるしくみのものなどがあります。その大きさもねじと同様に指でつまむことができるような小さなものから、大型の機械の衝撃をやわらげるための大きなものまでさまざまです。

路面の凹凸を吸収して衝撃を緩和するはたらき
執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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