機械要素の基礎講座
多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第3章 

3-9 コイルばねの成形

コイルばねは線材を精密かつ高速でコイル状に成形する必要がありますが、具体的にどのような工程でコイリングされているのでしょうか。ここでは硬鋼線やピアノ線、オイルテンパー線などの冷間成形ばね用鋼線によるコイリングを説明します。 なお、冷間成形に用いられる線材の直径は最大15.0mm程度であり、これより大きな直径のものは熱間成形による加工が行われます。

もし人間の手でコイリングをするとしたら、線材を円筒形の棒に巻き付けていくことを思い浮かべることができます。そして、実際にそのような方法でコイリングを行う加工法もあります。手で線材を巻いていく作業をどのようにして自動化すればよいでしょうか。

円柱状の材料を回転させて、ここにバイトとよばれる切削工具をあてながら材料を削る旋盤という工作機械があります。ここで回転している円柱状の主軸に線材を巻き付けていくことでコイルばねを成形することができます。 コイル部の直径は巻き付ける軸の直径、主軸の回転速度でコイルのピッチなどを設定できますが、材料を適当な角度で挿入できないと、ばねのピッチがずれてしまうため、ピッチに合った専用の治具を作るなどの工夫が必要です。 それなりに高速でコイリングができるものの、これけでは引張コイルばねのフック部やねじりコイルばねの腕部の成形はできないため、主に圧縮コイルばねを多品種少量する場面で使用されます。

現在、冷間加工によるコイルばねの成形で主流となっているものは、線材を棒に巻いていく方法とは異なり、線材をさまざまな形状をしたコイリングピンに接触させることでコイルばねを成形するコイリングマシンを用いた加工法です。

コイリングマシンの動作はまず、リール状に巻かれた線材をフィードローラの回転によってストレートナを通して直線状にしたものをワイヤガイドから送り出します。ここで送り出された線材は所定の位置にセットされたコイリングピンに接触することで、曲げ応力を受けて適切な角度に変形します。 一般にコイリングピンは2本あり、この位置を調整することで、コイルの直径が決まります。また、ばねのピッチはピッチツールの移動により成形されます。コイルばねの長さはあらかじめセットされたフィードローラの回転数に従います。 一定量の線材が送り出されるとフィードローラは停止し、カッティングツールが移動して、中央にある部材との間にせん断力がはたらき切断されます。カッティングツールが元の位置に戻ると再びフィードローラが回転して同じ動作を繰り返すことで、連続したコイリングが行われます。

ここでコイリングピンやピッチツール、カッティングツールの移動距離や移動のタイミングはカム式とNC式に分類されます。この加工法ではコイル部だけでなく、フック部の成形なども行うことができるため、一連の動作で最終製品を完成させることができるのです。

執筆: 宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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