切削工具の基礎講座
ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第2章 ドリル

2-3 ドリルの先端角

図に示すように、切れ刃を左右対称にしてドリルを横から見たとき、ドリルの先端の角度を「先端角」といいます。一般に多く使用されているドリルの先端角は118°ですが、近年では用途に合わせて色々な先端角のドリルが市販されています。図1に、先端角が118°のドリルを刃先から見た様子を示します。 図から、ドリルを刃先から見ると、溝の形状が影響し、切れ刃が一直線になることがわかります。 切削時に発生する切りくずは切れ刃に沿って排出されるため、切れ刃が一直線であると安定な穴加工を行うことができます。このため、一般的なドリルの先端角は118°になっているのです。ちなみに、先端角のドリルを118°よりも小さく研ぐと、切れ刃は凸形に湾曲し、118°よりも大きく研ぐと、切れ刃は凹形に湾曲します

世界遺産で日本が誇る富士山の傾斜は何度でしょうか?太宰治は富嶽百景において、陸軍の実測図によって東西および南北に富士山の断面図をつくってみると東西縦断は頂角124°、南北は117°に広がっていると記載しています。つまり、富士山の傾斜はおおむね118°です。

図2に、先端角と切削特性の関係を示します。先端角が大きいほどドリル先端が鈍くなるため、強度は高くなりますが、工作物に食い込みにくくなります。一方、先端角が小さいほどドリル先端が尖るため、強度は低くなりますが、工作物に食い込みやすくなります。 鉄鋼材料やステンレス鋼など比較的硬い工作物に穴あけを行う場合にはドリル先端の強度が高い方がよく、先端角が130〜140°の大きめなものを選択するのがよいでしょう。反対に、アルミニウム合金や銅合金など比較的軟らかい工作物に穴あけを行う場合にはドリルが食い込みやすい、先端角が90°程度の小さめなものを使用するとよいでしょう。 ただし、超硬合金製のドリルは粘り強さが低く、欠けやすいため、切れ刃の強度を優先し、先端角が130〜140°のものが多いです。工作物とドリルの材質の組み合わせによって、適正なドリルの先端角を選ぶことが大切です。

図1

図1

図2

図2

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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