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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第1章 溶接の基礎

1-2 金属材料の成り立ちと特性

溶接は、2つの金属を加熱して溶かし、その後冷却して固めることで2つの材料を接合、一つの部材にします。このように「金属を溶かして固める」と、なぜ接合されるのでしょう。このメカニズムを理解すると、ひずみの発生など、溶接によって起きるいろいろの変化が見えてきます。

1. 金属材料の成り立ち

そこで、まず、溶接によって起きる変化のメカニズムを知るため、どうしても理解しておかなければならない金属材料の成り立ちからお話しましょう。

皆さんが日頃から目にしている金属材料は、図2-1上段(a)の板や棒などブロック状のものです。この金属材料の一部を顕微鏡などで100〜200倍に拡大して見ると、図の中段(b)に示すように結晶粒と呼ばれる粒の集まりであることがわかります。さらに、これらの粒を詳しく調べると、図の下段(c)のように鉄なら鉄原子、アルミならアルミ原子が1個1個独立して存在し、結晶格子と呼ばれる規則正しい配列でそれぞれの原子が互いに引き合う結合力という力で結びついていることがわかります。

図2-1 金属の成り立ち

図2-1 金属の成り立ち

2. 材料による原子の配列パターン

原子の規則正しい配列状態の一例が、図2-1の下段(c)に示すような立方体の各カド部と立方体の中心(重心)位置に原子のある体心立方とよばれる組み合わせです(すなわち、マッチ箱の中にスジカイとなる原子が入っている状態と理解してください)。なお、図中で原子と原子の間に引かれている線は力ですから、実際には存在しません。したがって、金属の棒や板に、結合力以上の力を加えると原子と原子の距離が伸びたり縮んだり、ずれるなどして材料が変形します。すなわち、金属は、こうした原子と原子の結合力で結びついたマッチ箱(結晶格子)が立体的に多数連なってできた結晶粒の集まりでできているのです。

3. 結晶格子で決まる材料の特性

金属材料には、図2-2(a)に示すように常温の鉄(α鉄)に代表される体心立方材料の他、体心立方の重心位置の原子がそれぞれの面の中心位置にはまり込んだ図2-2(b)に示すに示す面心立方の材料があります。面心立方の材料には、アルミや銅、金、銀など箔と呼ばれる紙より薄い状態になります(そうです、面心立方の材料はマッチ箱構造で成り立っていることから、力が加わると容易に変形でき、箔のような薄い材料になれるのです)。これに対し、マッチ箱の中にスジカイとなる原子が入っている鉄のような体心立方の材料では、重心位置のスジカイの原子が邪魔をして変形をしづらくします。

これらの結晶格子材料の中間の変形特性を示す材料が図2-2(d)に示すスズのような正方格子材料で、重心位置にスジカイの原子が存在するものの1辺側が長い直方体の組み合わせとなり、1辺が長い分だけ変形がしやすくなります。なお、マグネシウムに代表される図2-2(c)に示す六方体の結晶格子の組み合わせの材料では、変形は極めて困難となり常温での加工はほとんど望めなくなります。

図2-2 金属材料の各種結晶格子

図2-2 金属材料の各種結晶格子

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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