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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-1 ガス溶接とガス切断について

ボンベに充てんされたプロパンやアセチレンなどの可燃性ガスと酸素を混合して燃焼させ、得られる高温のガス炎は、金属を溶かして接合、溶断(金属を溶かして切断することから溶断と呼びます)するのに利用されます。

燃焼ガス炎を利用する金属の加工作業では、不注意な作業状態により火災や爆発災害に結びつくことがあります。したがって、準備段階からこれらの災害防止のため、可燃性の油や布、プラスチックの片付け、 状況によっては可燃性物質やガスボンベ、圧力調整器、ガスホースなどを難燃性シートで覆うなど安全に十分注意した作業を行うことが必要です。

1)ガス溶接作業の概要

ガス溶接は、(1)電気などを必要とせず、電気の無い現場でも簡便に溶接できる、(2)基本的には母材の加熱、溶融のみを行い、溶接棒を使わないナメ付け溶接が可能になる(継手の肉となる溶着金属が必要な場合は、母材と同質の溶接棒を溶融池に接触させて添加します)などの利点があります。 一方で、熱源としての温度が低く、(1)溶接部の局部的な加熱が難しい、(2)母材の溶融に時間がかかる、(3)ひずみ発生が大きい、などの欠点があります。 こうしたことから、最近のように高精度の接合が要求されるようになるにしたがい、その利用は薄板の現場作業など限られたものとなっています(ただ、特性を活かし、各種金属材料のろう接などには効果的に利用されています)。

2)ガス溶接装置の立ち上げ

溶接作業に先立って行うガス溶接装置の立ち上げです。その作業は、

(1)安全教育で習得した作業前点検が不可欠で、これを確実に行います。

(2)酸素およびアセチレン(場合によってはプロパン)ボンベへの圧力調整器の取り付け状態、調整器や溶接トーチとガスホースの取り付け状態が、しっかりと取り付けられているかをチェックします。

(3)ボンベ頭部の開閉弁を開きボンベに取り付けた圧力調整器の1次圧計でボンベ内にガスの残っていることを確認します(圧力が0に近い場合は、弁を閉めボンベを交換します)。

(4)ガス圧調整バルブで2次圧を、表1-1のように設定します(この時、各接続部でガス漏れのないことを確認します)。

(5)ガス溶接トーチのアセチレンバルブ酸素バルブをわずかに開き、穴からこれらのガスの噴出するのを確認します。

表1-1 中型フランス式ガス溶接トーチの火口選択と圧力設定

火口No. 火口穴径 酸素ガス圧力 標準白心長さ 溶接可能板厚
50 約0.7mm 0.8MPa 約7.0mm 0.1〜1.0mm
100 約0.9mm 1.2MPa 約10.0mm 1.5〜2.0mm
200 約1.2mm 2.0MPa 約12.0mm 2.0〜3.0mm

*アセチレンガス圧力は酸素のほぼ1/10

3)ガス溶接の前準備作業

次に、溶接の前準備作業です。その作業手順は、

(1)溶接用保護具、ガス溶接用遮光保護メガネを付け、その装着状態を再確認します。

(2)ガス溶接用トーチのアセチレンバルブ、酸素バルブをわずかに開き火口先端に点火します。

(3)点火直後の火炎は図2-1-1(a)のような炭化炎となることが多く、この場合は、酸素バルブをわずかずつ開き同図(b)のやや炭化炎状態、そして(c)の標準炎状態に調整します(火炎が(c)のように左右対称となっていない場合は、一旦炎を切り、火口先端部を清掃し、火口穴も専用の掃除針を通して整えます)。

(4)アセチレンバルブ、酸素バルブをわずかずつ開き、火炎の白心の大きさが表2-1-1に示す程度の大きさの標準炎に調整します。

(5)母材面と白心先端の距離2〜3mmの位置で母材の試し加熱を行います(加熱が進むと母材表面が赤く赤熱状態になり、その中心に輝くような円形の溶融池が形成されます)。

(6)試し加熱で母材の溶融池形成がスムーズに進むようであれば、溶接に適した火炎の大きさであったことが確認できます(加熱に時間がかかるようであれば穴径の大きい火口に変え、白心長さ12mm程度の大きい炎を使用します)。

図1-1 標準炎の調整

図1-1 標準炎の調整

4)ガス溶接作業

次に、2枚の金属板の溶接作業です。

(1)2枚の部材を接合状態の継手にセットします。

(2)トーチに点火し、試し加熱で得た適正な白心の大きさの火炎で接合部の両端を溶融させ目的の継手状態に固定します(この固定のための仮止め溶接をタック溶接と呼びます、なお両方の母材の融合がうまく進まない場合は溶接棒を添加して融合させます)。

(3)目的の溶接を、図1-2に示す作業状態で行います(この場合、溶接開始位置で両母材が均一に溶融している溶融池を形成させ、これを一定の大きさに保つ様に溶接していきます)。なお、ガス炎による薄板溶接では、必要以上に溶接棒を添加せず、タック溶接箇所を多くし、溶接過程で発生するひずみを修正しながら溶接すると良いでしょう。

逆に、板厚が厚い場合は、溶接部は適度な隙間(ギャップ)を開け、白心に近い位置で母材を溶融させ溶接棒を添加しながら溶接します(図1-3が、板金加工品をガス溶接で組み立てた製品の溶接部です)。

図1-2 ガス溶接作業状態

図1-2 ガス溶接作業状態

図1-3 板金加工品のガス溶接品

図1-3 板金加工品のガス溶接品

5)ガス切断作業

ガス切断は、鋼材を燃焼ガス炎で加熱し、高温になった鉄に切断酸素を吹き付け、鉄より溶ける温度(融点)の低い酸化鉄を形成させて吹き飛ばし切断を行います。 したがって、ガス切断は、酸素と結合してできる素材より融点の低い酸化物を形成できる鋼材料のみに限られます(アルミやステンレスの融断には、基本的にプラズマやレーザが必要となります)。

なお、ガス切断作業では、次の点に注意して作業します。

(1)切断しようとする鋼材の板厚に応じ、表1-2のような穴径火口と酸素圧条件に設定します。

(2)切断酸素を出さない予熱炎を標準炎に調整し、この状態で切断酸素を出し、炭化炎に変化した白心部を予熱用酸素バルブを少しずつ開いて標準炎に再調整します(この場合、小さい穴径の火口で無理やり厚い板を切ろうとして過大な予熱炎で、過剰な切断酸素を供給すると炎の全長が短く不安定となり、裏面へのスラグの付着量が多く切断面が荒れ品質の劣る切断結果となります)。

表1-2 切断板厚と適正切断用火口の関係

火口No. 火口穴径 アセチレンガス圧力 酸素ガス圧力 切断可能板厚
1 約0.9mm 0.02MPa 0.3MPa 3〜15mm
2 約1.2mm 20〜30mm
3 約1.5mm 35〜40mm

(3)切断開始位置を、予熱炎の白心先端2〜3mmの位置で赤くなる(赤熱温度状態)まで加熱します。

(4)切断開始位置が赤熱温度状態に加熱できたら、切断酸素を勢い良く出し、切断を開始します(この時、良好な切断状態は、図2-1-4のように裏面に火花がスムーズに吹き飛ばされる状態で判断します)。

図1-4 良好な切断状態

図1-4 良好な切断状態

(5)切断は、図1-4のように予熱炎白心先端2〜3mmの位置を一定に保ち、一定速度で行います(そのため、図のように切断バルブを持つ手のひじを周辺部材や体の一部で支える工夫や専用動輪の利用などが有効となります)。

なお、薄板材の切断では、火口を進行方向と逆に少し傾け速い速度で切断すると良好に切断できます。

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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