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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-2 溶接用熱源としてのアークについて

一般に最も広く利用されている溶接の熱源が、「アーク」です。アークは、その形状や電流、電圧条件を変化させることで、目的の溶接に見合った熱源に容易に制御できます。こうしたことから、アークは、幅広い材料や製品の溶接に利用されるのです。

1)アークの成り立ち

アークは、食塩水の電気分解を空気中で生じさせたものと考えてください。すなわち、図2-1のアーク溶接装置の構成において、(1)溶接機を乾電池、(2)±端子につなぐ溶接機の溶接ケーブルを銅線、 (3)母材を銅線の先端に取り付ける一方の銅板、母材の対向電極となる金属棒(電極棒あるいは溶接棒と呼びます)を他方の銅板、に見なします。 食塩水の電気分解では、食塩が水に溶け分解してできるナトリウムと塩素から発生する+のイオンと−の電子がそれぞれ+極、−極に導かれ電気の流れが形成されます。 これに対しアークは、母材と電極棒の間のガスなどが−の電子と+のイオンに分解される電離状態となり、電極棒と母材の間に電気の流れを形成するのです(この電気の流れを放電と呼びます)。

図2-1 アーク放電の概要

図2-1 アーク放電の概要

2)アークの性質

こうしたアーク放電は、高電流、低電圧の条件で維持され、強い光とともに大きな熱を発生します(この熱が溶接に利用されます)。同じ放電でも、100V数Aといった家庭用の高電圧、低電流で形成されるグロー放電では、強い光は発生しますが熱は発生せず蛍光灯に利用されています。

アーク放電では、−の電子が導かれる+側の加熱が進みます(したがって、電極棒が+、母材が−の接続の溶接で、母材溶け込みの大きい溶接が可能となります)。 また、電極と母材の間のアークを発生している空間に電圧を発生します(これをアーク電圧と呼びます)。 図2-1に示すように、このアーク電圧は、−の電子が集まってくることで生じる陽極電圧降下と+のイオンが集まってくることで生じる陰極電圧降下、中央のアーク柱で発生するアーク柱電圧降下の総和となります。 アークの発生時において、電極棒先端と母材間の距離(アークの長さ)が変化した場合、陽極電圧降下と陰極電圧降下はほぼ一定ですが、アーク長さが長くなるとアーク柱電圧が上昇しアーク電圧が高くなります。

こうしたアーク長さの変化とアーク電圧の変化の関係の目安を代表的なアーク溶接法について示したものが表2-1で、それぞれの溶接法で同じアーク長さでの電圧値やアーク長さの変化による電圧の変化程度には違いが見られるものの、「アーク長さが長くなると電圧が上昇する」現象が確認できます。

表2-1 各種アーク溶接法でのアーク長さの変化にともなうアーク電圧の変化

アーク長さ
La(mm)
被覆アーク溶接 直流TIGアーク溶接
100A 200A 100A 200A
2 26.2V 27.0V 12.0V 12.4V
3.5 29.1V 31.5V 13.8V 14.5V
5 32.2V 34.0V 14.3V 16.4V
3)アーク長さがアーク発生状態、母材溶け込みに与える影響

アークの発生状態からアーク電圧条件を読み取り、そのアーク長さが見えるようになると、各溶接法での溶接条件設定のポイントが良く理解できるようになります。 例えば、アーク長さとアーク発生状態ならびに母材の溶け込み状態と関係を示した図2-2から、目的とする溶接状態に適した電圧条件が見えてきます (例えば、溶け込み深さを得たい場合はアーク長さを(a)のように短く、肉を盛る溶接では不必要な母材の溶け込みを抑える (c) のようなやや長いアーク長さで、中間的な溶接では (b)の状態で溶接します)。

図2-2 アーク長さの変化がアークの発生状態、母材溶け込み状態の変化に及ぼす影響

図2-2 アーク長さの変化がアークの発生状態、母材溶け込み状態の変化に及ぼす影響

4)アークを利用する各種溶接法

アーク放電で発生する高温の熱を利用し溶接する方法は、図2-3のように電極棒が溶けて母材側に移行する消耗電極式アーク(この場合の電極は、母材材質に近い材質の金属棒あるいは金属ワイヤとなります)と、 電極は溶けて母材に移行しないタングステンなどを電極棒とする非消耗電極式アークに大別されます。 さらに、消耗電極式アークは、溶けている金属を保護(シールド)する方法により被覆アーク、ミグ(MIG)、マグ(MAG)溶接に分類されます。

図2-3 各種アーク溶接法の関係要

図2-3 各種アーク溶接法の関係

なお、造船などで厚板を高能率で自動溶接する方法として利用されているサブマージアーク溶接法は、被覆アーク溶接棒の周りに塗り固める被覆剤(フラックスとも呼び、これが加熱され分解することで発生するガスやスラグで溶けた金属を保護する)を粉状にして溶接線上に散布し、 図2-4のように散布されたフラックスの中に裸の金属ワイヤを連続的に送り込んでアークを発生させ溶接する方法です(アークがフラックスの中に潜った状態になるため、このような呼び方がされます)。 このサブマージアーク溶接に見られるように、従来の使用状態を見直し、これから行おうとする溶接に対しより適した方法を考えるなどすることで、新しい溶接の方法や現場溶接での改善や工夫が生まれてきます。

図2-4 サブマージアーク溶接法

図2-4 サブマージアーク溶接法

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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