工具の通販モノタロウ > 溶接の基礎講座 > 2-8 半自動溶接でのシールドガス及び溶接ワイヤの選択
溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-8 半自動溶接でのシールドガス及び溶接ワイヤの選択

ミグ(MIG)、マグ(MAG)溶接など細径ワイヤを自動的に送給しアークやプールをシールドガスで保護する半自動アーク溶接では、使用するワイヤとシールドガス、 溶接条件によってワイヤ先端に形成されるワイヤ溶融金属が母材プールに移行していく現象(以後、移行現象と呼びます)などが変化し、使用できる作業も変化します。 したがって、半自動アーク溶接では、目的に合った移行現象となるシールドガスやワイヤ、溶接条件の組み合わせを適正に選択することが必要となります。

1)シールドガス及び溶接ワイヤの選択

図8-1は、半自動アーク溶接におけるワイヤの溶融金属の移行現象の形態を図で示したものです。また、それぞれの移行現象がどのような条件で得られるのかをまとめて示したものが表8-1です。

図8-1 半自動アーク溶接でのワイヤ溶融金属の移行現象

図8-1 半自動アーク溶接でのワイヤ溶融金属の移行現象

表8-1 半自動アーク溶接での溶接条件とワイヤ溶融金属移行

ワイヤの種類 シールドガスの種類 溶接条件 ワイヤ溶融金属の移行現象
電流 電圧
ソリッドワイヤ ArまたはAr+O2、Ar+CO2(マグ混合ガス) 小粒子(スプレー)移行
中粒子(ドロップ)移行
大〜小 短絡(ショートアーク)移行
CO2 大〜小 塊状(ブロビュール)移行
大〜小 短絡(ショートアーク)移行
複合ワイヤ CO2またはAr+O2(マグ混合ガス) 粒子移行

表8-1に示すように、基本的なワイヤ溶融金属の移行現象は、使用するワイヤの種類とシールドガスによって大別されます。すなわち、

1.アルゴンをシールドガスとして用いる「MIG溶接(基本的に、アーク温度が低い)」では、図8-1(a)のドロップ移行となる小電流条件では、溶け込みが少なく、ドロップ移行によるアーク不安定から特殊な場合を除き使用されません。 一方、大電流条件で同図(b)のスプレーの移行の場合は、図のように小粒子となったワイヤ溶融金属が高速度でプールに衝突し図に示すフィンガー状の溶け込みが得られるとともにアークも安定し利用されます。 ただ、スプレー条件で薄板や立、上向きの溶接を行うと、溶け込みが大き過ぎて溶接が難しくなります。そこで、これらのMIG溶接では、低いベース電流と高いパルス電流を一定周期で変化させる「パルスMIG溶接」を利用します。

1.アルゴンをシールドガスとして用いる「MIG溶接(基本的に、アーク温度が低い)」では、図8-1(a)のドロップ移行となる小電流条件では、溶け込みが少なく、ドロップ移行によるアーク不安定から特殊な場合を除き使用されません。 一方、大電流条件で同図(b)のスプレーの移行の場合は、図のように小粒子となったワイヤ溶融金属が高速度でプールに衝突し図に示すフィンガー状の溶け込みが得られるとともにアークも安定し利用されます。 ただ、スプレー条件で薄板や立、上向きの溶接を行うと、溶け込みが大き過ぎて溶接が難しくなります。そこで、これらのMIG溶接では、低いベース電流と高いパルス電流を一定周期で変化させる「パルスMIG溶接」を利用します。

なお、この溶接にマグ混合ガス(アルゴンに25%以下の炭酸ガスを加えた混合ガス)を使用すると、図8-2のようにスパッタが少なくビード外観も良くなるものの、 移行現象的にはMIG溶接と同じになり、溶け込みも得られにくくなります(したがって、炭素鋼の小電流MAGガス溶接ではパルス機能の利用が基本で、無い場合は入熱の不足分だけ電流を高めて溶接することが必要となります)。

図8-2 炭酸ガスアーク溶接とマグ溶接の違い

図8-2 炭酸ガスアーク溶接とマグ溶接の違い

3.フラック入りワイヤを用いる炭酸ガスやMAGガス溶接では、全電流条件で(d)の粒子移行となるため、大電流でもスパッタ発生が少なくアークがソフトで、スラグの生成によるビード外観の向上も認められることから中・厚板の鋼やステンレス鋼の高能率溶接に利用されます。 なお、最近では、全姿勢の溶接が高能率に溶接できる、フラック入りワイヤも市販されており、目的に合ったワイヤを選択することでいろいろの高能率溶接に利用できるようになっています。

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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