潤滑油の成分

機械を滑らかに稼働させるために用いられる潤滑油。潤滑油はさまざまな用途に適したものが選ばれます。そのため、潤滑油そのものには、使用用途に適した性能を持った成分が配合されています。機械の安全な運転を心がけるためにも、潤滑油の使用は欠かせませんが、その潤滑油への理解を深めるためにも、どういった成分でできているのか、どういった製造工程で作られるのかを知っておくことをオススメします。ここでは、潤滑油の成分と製造工程について解説します。

潤滑油の成分について

潤滑油の成分は主に、その大半を占める「基油」と、用途に応じた性能に高められているさまざまな「添加剤」が混ぜ合わせられています。

潤滑油のベースオイルと呼ばれる「基油」は、およそ90%以上が鉱油(石油の潤滑油留分を精油したもの)を使用しています。鉱油系のベースオイルは、原油から灯油やガソリンを精製する際に得られます。

鉱油の使用では充分な性能が発揮できないケースにおいては、使用用途に最適な特性を持つ、化学的に合成された合成油も使用されます。

「基油」と一緒に混ぜられる「添加剤」には、数千を超すほどの種類があり、使用用途として求められる性能に合わせ、さまざまな「添加剤」を組み合わせることによって配合します。

鉱油系のベースオイルが使用される理由

潤滑油の主な成分である鉱油系ベースオイルが広く渡って使用されるのには理由があります。

潤滑油として使用するためには、適度の粘度が必要となりますが、鉱油は潤滑油としての使用用途に適した粘度を持った留分(混合液体を分別蒸留した際に得られる成分)が、石油燃料を生産する同一工程において大量に精製されます。そのため、供給コストを抑えることができるので、潤滑油として鉱油が幅広く使用されるのです。

また、原油の精製中に得られる重質留分が潤滑油に適している理由としては、化学構造的に、ベースオイルの基本特性として求められる粘性や流動性を満たしているからなのです。

潤滑油のベースオイルの製造工程

潤滑油のベースオイルとされる鉱油は、「水素化処理での精油方法」「溶剤抽出と水素化仕上げによる方法」の2つの方法によって製造されます。それぞれ、原油を常圧蒸留(蒸留したい液体に熱を加えることによって、その蒸気を集める蒸留方法)、減圧蒸留(蒸留釜の内側の気圧を下げて蒸留する方法)して得たものを精製する工程により製造されます。それぞれの製造工程にはポイントや特徴の違いがあります。ここでは、鉱油の具体的な製造方法を見てみましょう。

水素化処理での精油方法

水素化処理での精油方法では、重質油の成分を減圧下で蒸留します。次に、溶剤脱れき工程によって、潤滑油として適さない成分であるアスファルトを取り除きます。また、溶剤脱ろう工程において、油の中に含まれているロウ成分を除去。これは、低温度下でも固まりにくくするために必要な工程です。

これらの工程によって、潤滑油として使用できる成分を取り出した後に、「添加剤」を加えて調合。最終的に、潤滑油製品が完成します。

この方法の特徴は、高温・高圧の条件下で精製する点にあります。また、原油そのものの性質に依存することのない、安定したベースオイルが生成できることもポイントの一つです。

溶剤抽出と水素化仕上げによる方法

溶剤抽出と水素化仕上げによる方法では、まず減圧蒸留されたものをフルフラールと呼ばれる有機化合物などの溶剤に溶かします。水素化処理での精油方法同様、溶剤脱れき工程において、潤滑油として適さないアスファルトを取り除きます。溶剤抽出工程と水素化仕上げ工程では、潤滑油の化学的な安定性に悪影響を及ぼす不純物を除去します。

また、低い温度でも固まりにくくするため、こちらも溶剤脱ろう工程において、油の中に含まれているロウ成分を除去します。これらの工程を経て、潤滑油として使用できる留分を分離させた後、添加剤を加え調合し、潤滑油製品を完成させます。この方法による製造工程の特徴は、低温・低圧に近い条件下で不純物を取り除いて製造する点にあります。

どちらの方法でも、ロウ成分の除去には、脱ロウ装置を用います。脱ロウ装置で潤滑油留分に溶け込んでいるワックス分を除去し、その後、軽質留分(粘度の低い留分)から重質留分(粘度の高い留分)まで、粘度グレードがいくつか分かれます。これらの工程を経ることで、ベースオイルが取り出されます。

潤滑油の性能はベースオイルで決まると言っても過言ではありません。安全な機械の運転を心がけるためには、良い潤滑油を選ぶ必要があります。品質の高いベースオイルを選ぶことが大切といえるでしょう。

『防錆スプレー/潤滑剤スプレー』に関連するカテゴリ