洗浄方法の種類

産業洗浄と一口に言っても、ジェット噴射を利用した方法や浸け置きする方法など、その方法は多種多様。洗浄方法によって、落としやすい汚れはもちろん、設置する設備やランニングコストも大きく変わってきます。今回は代表的な洗浄方法をいくつかご紹介しましょう。

ジェット洗浄

洗浄装置のポンプによって加圧された洗浄液をノズルから噴射し、その衝撃力によって汚れを物理的に剥ぎ取る方法です。強力な噴射圧水流によって、溝や穴の奥深くに入り込んだ油汚れやグリス、泥などを落とすことができます。 強力な洗浄効果を期待できるため、洗浄精度が求められる機器や大きな設備の洗浄に用いられることが多いでしょう。ただし、対象が水に濡れても大丈夫な素材かどうかは確認が必要です。 ジェット洗浄に使われる洗浄剤は、水系・準水系です。特に、アルカリ性洗浄剤を溶かした温水を用いると更に効果がアップします。一方、引火性のある有機溶剤を使用した洗浄剤は向いていません。主な被洗浄物には、壁・床、土管・配管、バリ取り洗浄などがあります。

スプレー洗浄

スプレーノズルから中圧の洗浄液を噴射して洗浄する方法です。噴射式の洗浄方法の中では中程度の威力となります。 スプレーノズルには、フルコーンやフラットなど、範囲や噴霧量にさまざまなタイプがあります。そのため、洗浄対象にマッチングするタイプ、角度、粒子径を持つノズルを選ぶことがポイントです。 スプレーが当たらない部分がないようにする工夫しましょう。汚れを落とす威力は高圧洗浄に劣りますが、生産ラインのすすぎ工程やコンベアの洗浄など、さまざまな場面で活用されています。

金属表面洗浄、コンテナなどの内面洗浄などが主な被洗浄物です。

シャワー洗浄

加圧ポンプによって、低圧の洗浄液をシャワー状に噴出する方法です。噴射式の洗浄方法の中では低威力になるため、デリケートな対象物などに使用します。 ノズルは洗浄装置に固定するケースが一般的なので、汚れに対して正確にシャワーが当たるように調整することがポイントです。ノズルの数や位置、種類や圧力を工夫して、シャワーが全面に均等に当たるよう調整します。 対象物がコップのように中が空洞状だった場合も、内側にもノズルが来るように調整したり、対象物を回転させたりして全ての面にシャワーが当たるように工夫しましょう。

シャワー洗浄は、面積の大きな対象物を一気に洗う時や、ダメージに弱い部品を洗う時など、さまざまな場面で用いられます。具体的には自動車の塗装前洗浄や仕上げ、基板の狭小ギャップ、実験器具などが代表的です。

浸漬洗浄

「浸漬」とは、対象物を液体にひたすことを言います。洗浄槽に洗浄液を入れ、その中に被洗浄物を入れて汚れを分解する方法です。ICチップ、純銀・純アルミ部品など、噴出式の洗浄ができない、非常にデリケートな部品に用いられます。

単純に洗浄液に対象物をひたすだけの「単純浸漬」は、洗浄剤の洗浄力によって効果が決まります。対象物や汚れに合わせて洗浄液の温度や濃度、ひたす時間などを工夫しましょう。 単純浸漬のほかには、アクチュエーターを活用して対象物を液中で上下左右に揺らす「浸漬揺動洗浄」や、不活性ガスを槽下部から発生させる「バブリング」などの方法があります。また、浸漬洗浄に使った洗浄液は、表面に浮いてきた油分を除去したり、液をフィルターでろ過したりすることでリサイクルが可能です。

超音波洗浄

超音波発振器と振動板を使って超音波を起こし、振動エネルギーによって対象物の汚れを落とす方法です。浸漬洗浄より更に効果が高く、さまざまな部品や製品に使用できます。洗浄槽の側面や底に振動板を貼りつけ、超音波発振器によって起こした電磁エネルギーを、液中で振動エネルギーに変えるという仕組みです。これにより発生する粗密波はとても強力で、油汚れやこびりついた乾燥汚れも除去できます。しかも短時間で細部まで洗浄することができて、一度に複数個の洗浄が可能です。そのため、幅広い分野でポピュラーな洗浄方法とされています。

ただ、周波数によって落とせる汚れが異なるため、複数の周波数を調整したり、超音波が当たる部分と当たらない部分が出ないように工夫したりする必要があります。 周波数によっては対象物にダメージを与えてしまうため気を付けましょう。また、超音波は液体の温度を上げるため、引火性の洗浄剤を使用する時には注意が必要です。主な被洗浄物には、IC、トランジスタ、プリント板、レンズ、電装部品などがあります。

まとめ

洗浄する対象物は何か、どの程度の清浄度が求められるかによって、洗浄方法は変わってきます。最適な方法は、洗浄装置の設置場所やランニングコスト、排水処理や防火装置の有無などによっても変わるため、総合的に検討して洗浄方法を判断すると良いでしょう。