生物物理学における非平衡の熱力学 新装版
古典的熱力学は科学的頭脳が生みだしたすぐれた成果の一つであって、数少ない基本的原理と演算上の過程を土台として、無数の関係が演繹され、観測可能な現象を正しく記述している。しかし古典的熱力学の適用範囲は、本質的には平衡状態にある系、あるいは可逆過程を行なう系に限られており、とくに閉じた系にはよく応用できるが、生物は非平衡系で不可逆過程を行なっているので、生体系に起る総合的過程を記述するためには、大して役に立たなかった。 熱力学の近年における発展は、不可逆過程の定量的な記述を可能にするようになって来た。本書は、熱力学のこの新しい分野を生物物理学、物理的生化学、生理学の学生に紹介し、生物学的問題への応用の可能性を示すために書かれたもので、ハーバード大学の生物物理学の課程で著者が行なった講義を骨子としている。生物物理学的な問題に興味をもつ人々を主要な対象としているので、精密な数式の展開より生体系における物理的概念に重点がおかれているが、初めに古典的熱力学の概観が与えられ、本書だけで完結したものとして本質的な理解ができるし、また訳者の詳細な補遺と相俟って、非平衡の熱力学そのものに関心をもつ人々にも十分役立つであろう。
ジャンル物理学
分類専門
判型A5
ページ数280
著者名A・カチャルスキー ピーター・F・カラン 青野修
初版年月2017/04
内容量1冊