本書は,信頼性理論について近年の話題である多状態システムに関する議論を,その背景となる2状態システムの議論と共に理論的側面に焦点を当てながらまとめたものである.
従来の信頼性理論は,故障と正常の2状態のみを前提とした複数の部品とそれらから構成されるシステムについて,部品の信頼性とシステムの信頼性の確率論的な関係を議論するものであった.実際には,これらの2状態に限定されず,多様な劣化状態を取ることから,近年では多状態システムとして,2状態の議論を多状態の議論に拡張することが試みられている.その際,部品やシステムの状態空間の構造として,順序集合が想定される.本書は,2状態から多状態に至るシステムの信頼性を順序集合論的・確率論的に議論し,実際のシステムの信頼性評価にとって有用な手法を解説する.