両面テープ・接着剤にはどのような印象をもっているでしょうか?
「専門性が不要で誰でも簡単に作業ができる」「素材を傷つけずに接合できる」といった良い印象がある一方で、「溶接に比べると強度が弱い」「耐久性が低い」という印象を持っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん、溶接やリベット、カシメといった物理的な接合に比べると強度は落ちます。しかし、目的に合わせて最適な商品を選ぶことで使えるシーンは広がります。
知っているようで知らない両面テープ・接着剤の進化と最適な選び方をお伝えします。
両面テープ・接着剤の進化
知らない!?①多少の油面でも接着強度が発現する接着剤
接着面に機械油等の油膜がある場合、一般には溶剤などでの脱脂が必要とされています。
ですが、油がついている表面であっても接着強度を発現する製品があります。それが可能な接着剤を「油面接着剤」といいます。
知らない!?②ついにここまで!トラックや列車等重たいものでも引っ付く超強力接着剤
直径7cmの接着面で10トントラックを持ち上げ

3Mの接着剤“3M Scotch-Weld DP 760”は、わずか直径7cmの接着面で10トントラックを空中に持ち上げ、地上1mの高さで1時間保持ことに成功し、2012年に世界記録と認定されました。
3グラムの接着剤で208トンの列車を牽引

ヘンケル社のロックタイト(LOCTITE)Rハイブリッド構造用接着剤はわずか3グラムの接着剤で208tの貨物列車の牽引に成功しています。
知らない!?③溶接の代わりになるほどくっつく両面テープ
溶接の代わりに超強力両面テープで接合することで、曲面や凹凸面の接合が誰でも簡単にできるようになりました。
溶接跡も残らない為、デザイン性の向上にもつながっています。
接合部の変形や振動が多い場合には両面テープだけでも十分な強度を発揮することがあります。
従来のリベット・カシメでの課題 | 超強力両面テープ | |
---|---|---|
時間がかかる | 時間が短縮 | |
難しい作業 | 作業が簡単 | |
力が必要 | 力を必要としない | |
大きな音が出る | 音を立てずに作業ができる |
\ 金属だけでなくプラスチックも強力接着 /
溶接の代わりに金属を接着するのはもちろん、通常接着しにくいプラスチックも強力に接着可能。
ワーク別のポイント
ひとくちに接合といっても、小さなパーツをくっつける場合や建築物に使用する場合など使うシーンはさまざまです。
ご自身のワークに合わせて、どのような製品群を選ぶべきかを検討しましょう。

パネル・フレーム
細い骨組み、補強材でパネルやフレームを支える際の接合は、一般的に強い強度が必要になります。
すぐに施工したい看板などは超強力両面テープを、強度が必要な輸送機などはエポキシ樹脂系・アクリル樹脂系の接着剤をご使用ください。

大面材
面で接合する場合は、単位面積あたりの荷重は低いため、低コストの一般的な両面テープ・接着剤で接合出来ます。
すぐに次の工程に移りたい場合は一般両面テープを、養生時間が取れる場合はゴム系などの接着剤をご使用ください。

パーツ
パーツ固定の場合はその重量や接着面積によって、両面テープ・接着剤に必要とされる強度は様々です。
単位面積当たりの荷重に合わせた製品で、すぐに接着したい場合は両面テープを、養生時間が取れる場合は接着剤をご使用ください。

3次元形状
3次元で不定形な形状の接合では、両面テープではなく、その形状に追従できる流動性があるエポキシ樹脂系・アクリル樹脂系の接着剤をご使用ください。
金属ネジのゆるみ止めには専用の接着剤をご使用ください。
素材別のポイント
被着体の材質も重要になります。難接着材料の場合、専用の両面テープ・接着剤が必要になります。
接着する材料の性質を検討したうえで選んでいきましょう。
つきやすい素材、つきにくい素材
つきやすい、つきにくい素材であるかどうかは材質固有の「濡れ性」というものが関わっています。濡れ性とは個体の上に液体を置いたときの広がり方で表すことが出来ます。
濡れ性が低い(接着力が低い)素材を接合する場合には以降で紹介する専用製品を使用するか、プライマーを使うことが一般的です。


金属
金属は比較的接着しやすい素材で、どのようなテープ・接着剤でも接合が可能です。特に超強力両面テープやエポキシ系・アクリル系の接着剤の中には、溶接やネジ、リベットなどの代わりに使われているほど強力なものもあります。
ただし表面に油がついている場合や、組立後のさびには注意が必要になります。

プラスチック(PP・PE)
プラスチックには様々な種類がありますが、特にポリエチレン・ポリプロピレンは接着しにくい素材で、専用の両面テープ・接着剤をご使用頂くか、プライマーとの併用が必要になります。以下ではポリエチレン・ポリプロピレンでも接着可能な専用の両面テープ・接着剤をご紹介致します。
それ以外のポリエステル・ABS・ポリカーボネートなどは、ポリエチレン・ポリプロピレンよりも接着しやすい素材で、一般的な両面テープ・接着剤で接合することが出来ます。

軟質性塩化ビニール
塩化ビニール(PVC)には硬質塩ビと軟質塩ビがあり、特に軟質塩ビは柔らかくするための添加剤(可塑剤)が多く含まれ、それがにじみ出てくることで接着しにくくなる、接着した後にはがれてしまうことがあります。そのような際には専用の両面テープ・接着剤をご使用下さい。

シリコーン
シリコーンは自動車のワックス・撥水剤などに使われるように、汚れや水などをはじく、くっつきにくい性質があり、最も接着が難しい素材のひとつです。シリコーン接合用に開発された、専用の両面テープ・接着剤をご使用下さい。
用途別のポイント
被着材への接着性と作業性から接着剤を大まかに選定できたら、次は接着した後はどのような条件が加わるのかを考えます。
接着の持ちをよくするためには、用途別に専用の接着剤や両面テープを選ぶことが重要になります。
接着後どのような場所で、どのような使われ方なのかをイメージしながら必要な耐久性能別に選んでいきましょう。