蒸気洗浄の仕組み

洗浄と乾燥のふたつの工程は、製品の品質を左右する重要なポイントです。このふたつの工程において、蒸気の力を利用して洗浄・乾燥を行う蒸気洗浄と蒸気乾燥は、大きな効力を発揮する重要な技術であり、精度の高い精密仕上げ洗浄などに活用されています。 それぞれの技術の仕組みや特徴をご紹介していきましょう。

蒸気洗浄とは

蒸気洗浄(またはスチーム洗浄、ベーパー洗浄)とは、洗浄溶剤を加熱沸騰して蒸気を発生させ、その蒸気に被洗浄物をさらすことで洗浄を行う技術のことです。詳しい仕組みはどういったものでしょうか。

蒸気洗浄においては、まず洗浄槽の下部にて洗浄液を加熱し、沸騰させ、洗浄槽内を洗浄液の蒸気で充満させます。このとき、生じた蒸気が洗浄槽の外に漏れ出すことを防ぐため、洗浄槽の開口部に冷却水を通すのが一般的。 そうすることで、蒸気が開口部を通過する際に冷却水による冷却を受け、効率よく洗浄水を凝縮回収することが可能です。続いて洗浄槽の内部を蒸気で満たし、その中に洗浄液の沸点よりも低い温度の被洗浄物をさらす工程へ。 すると、蒸気の温度と被洗浄物の温度の差によって、被洗浄物に触れた蒸気が被洗浄物表面上で凝縮し、表面から流れ落ちます。こうして、被洗浄物は蒸留精製された溶剤液で洗浄されたかのような状態となるのです。

蒸気洗浄では、蒸気の温度と被洗浄物の温度の差を利用して凝縮を生じさせるため、凝縮する洗浄液の量に限界があります。被洗浄物を長く洗浄槽の内部にとどめておくと、次第に被洗浄物の温度が蒸気の温度に近づいていき、両者の温度が等しくなるとそれ以上の凝縮は発生しません。 したがって、蒸気洗浄はあくまで仕上げ洗浄として用いられます。汚れが顕著な場合はあらかじめ浸漬洗浄などで予洗をするのが常用です。

  • 蒸気洗浄に適した条件としては、以下の4点が挙げられます。
  • 被洗浄物の汚れが顕著でないこと
  • 被洗浄物の汚れと洗浄液の相性が適切で、少ない洗浄液でも容易に汚れが溶け出すこと
  • 洗浄液の沸点が高すぎず、引火性がないこと
  • 被洗浄物は熱容量が大きく、蒸気との温度差が十分にあること

以上のような条件であれば、効率的に蒸気洗浄を行うことが可能です。ただし、引火性がある高沸点の洗浄剤であっても、密閉型の洗浄槽内で減圧環境を作り出して沸点を下げた場合においては、蒸気洗浄を無理なく使えます。

蒸気乾燥とは

蒸気乾燥(またはベーパー乾燥、スチーム乾燥)とは、蒸気の凝縮の作用によって被洗浄物の仕上げ洗浄を行い、同時に蒸気の熱量を利用して乾燥を行う技法のことです。そのメカニズムはどういったものでしょうか。

蒸気乾燥は、まず蒸気洗浄と同じように、加熱沸騰して生じた洗浄液の蒸気によって被洗浄物の洗浄を行います。洗浄液の蒸気の温度と、被洗浄物の温度の差によって蒸気が蒸留し、被洗浄物の表面を流れ落ちることで仕上げ洗浄の効果が得られるのです。 蒸気乾燥ではこの仕上げ洗浄の後、被洗浄物を蒸気の中に長く留めて温度を上昇させます。蒸気と被洗浄物の温度が等しくなれば、洗浄液の凝集はそれ以上起こりません。また表面に付着した洗浄液も水蒸気化して取り除かれるため、被洗浄物は乾燥状態となります。

このようにして、被洗浄物の仕上げ洗浄と乾燥をひとつの槽で、同時に行うことができるのが蒸気乾燥のメリットです。一方で、微小な被洗浄物で蒸気乾燥を行う際には、被洗浄物に残留した微量の溶液で、乾燥シミが発生することがあるので別途対策が望まれます。

  • 蒸気乾燥に適した主な洗浄液は次のとおりです。
  • 塩素系(トリクロロエチレン、塩化メチレン等)
  • フッ素系(HFE、HFC等)
  • シリコン系
  • 臭素系溶剤
  • アルコール類

上記以外では、真空環境内において炭化水素系洗浄剤などが利用できます。

<まとめ>

蒸気洗浄・蒸気乾燥は、蒸気の作用をうまく活用して、精密な仕上げ洗浄・乾燥ができる優れた技術です。被洗浄物と洗浄液の適合に留意して、効率の良い洗浄・乾燥を行いましょう。