オイルシールの型式
オイルシールの形状別の特徴について
オイルシールは、潤滑用のオイルの漏れを防ぐとともに、外部からの異物の進入を阻止することを目的とする製品で、産業機械を始めとするさまざまな機械の回転部分に使用されます。昨今ではオイルシールの使用用途が広がったため、その使用条件にあわせてさまざまな形状のオイルシールが販売されています。そこでここでは、オイルシールの形状ごとの特徴について、細かく解説したいと思います。
オイルシールの型式ごとの特徴
1:A型
A型のオイルシールは、主に回転用として多く用いられます。A型はさらに形状に応じて3つの種類に分類されます。
- 標準形式:シールの対象を一方側におき、単独で使用するタイプのオイルシールで、次の2つの型式があります。AC型:外周を金属で覆う形の形状をしたオイルシールです。AD型:外周をゴムで覆う形の形状をしたオイルシールです。
- 特殊形式1型:圧力の影響でリップが変形しにくいよう設計されたオイルシールで、主に耐圧用のオイルシールとして使用します。外周を金属で加工したACS-1型と、外周をゴムで加工したADS-1型の2種類があります。
- 特殊形式2型:主に外径150㎜以上の大型寸法のシールとして用いられる型式で、AC型やAD型の裏面に「補強環」を組み込んだタイプのオイルシールです。

2:U型
U型のオイルシールは、A型と同様に回転用として多く使用されますが、その特徴としては、内部からのオイル漏れよりも外部からの粉塵や砂塵などの異物から保護する目的で使用されます。
- 標準形式:A型の場合は、外周の素材を金属の場合AC型、ゴムの場合AD型と表現しましたが、U型の場合は、オイルシールの外周が金属の場合をUD型、外周がゴムの場合をUE型と言います。
- 特殊形式1型:A型の特殊形式と同様に、圧力による変形に強い形状として耐圧用シールとしての性能を有しています。またU型の特徴である外部からの異物の進入を防ぐのにも最適なオイルシールです。
- 特殊形式2型:主に外径150㎜以上の大型寸法のシールとして用いられる型式で、UD型やUE型の裏面に「補強環」を組み込んだタイプのオイルシールです。
- 特殊形式3型:3型はちりよけの向きが1型とは反対で主リップ側を向いているため、リップの間にグリースを充填して使用することができます。一時的に油が切れた場合や、ちりよけの側から軸を挿入する場合などに効果を発揮します。
- 特殊形式4型:摺動(機械装置などを滑らせながら動かすこと)用のシールとして用いられ、往復運動などの摺動によるリップの変形を抑えるように設計されています。
- 特殊形式5型:取り外しのしやすさを重視する場合は、5型がおすすめです。ちりよけが主リップと逆方向を向いているものをUES-5型、ちりよけが主リップと同じ方向を向いているものをUES-35型といいます。

3:K型
K型のオイルシールは、先ほどのA型のオイルシールと併用して使用したり、トルクを抑える場合などに使用します。基本的にはグリスシールとしての性能を有しています。
- 標準形式:形状が非常にシンプルなため、補助的なダストシールとして使用できますが、複雑なシーリングなどには向いていません。外周が金属のタイプをKD型、外周がゴムのタイプをKE型といいます。
- 特殊形式1型:標準形式と同様にシンプルな形状で、外部からの塵や砂塵などを防ぐとともに、内部からのグリスの漏れ出しを防止する性能を有しています。ただ、やはり複雑なシーリングには向いていません。
- 特殊形式KC型:主に外径100㎜以上のシールとして用いられる型式で、強度がある大型寸法に多く用いられます。シールの性能は標準形式と同等です。

4:S型
上記のオイルシールとは違い、ハウジング内面とシールの外周リップをすべらせて保護するタイプのオイルシールです。設計上、軸とシールの相性が悪い場合に使用します。

このように、オイルシールの形状には、タイプごとにさまざまな特徴があり、実際に使用する箇所に応じて適切な形状のものを選ぶことが大切です。