HDAM-SA2+ フルディスクリート無帰還出力バッファーを搭載したマランツ初のUSB-DAC/ヘッドフォンアンプ
・DSD 2.8/5.6MHz&PCM 192kHz24bit アンシンクロナス伝送対応。
・HDAM-SA2 + フルディスクリート無帰還出力バッファーを搭載、新開発ヘッドフォンアンプ。
・PC及びデジタル回路からの高周波ノイズの影響を低減する、デジタル・アイソレーション・システム
・ DSDダイレクト変換対応高性能D/Aコンバーター「CS4398」搭載
まずオルガン伴奏の合唱を聴く(192kHz/24bit FLAC音源)。演奏が始まる直前の暗騒音を聴いただけで音場の絶対的な広さが伝わり、礼拝堂の奥行きの深さや天井の高さが目に浮かんだ。旋律だけでなく足鍵盤が受け持つ超低音域も一音一音の音色と動きを忠実に再現し、もやもやとした曖昧さがない。澄んだ低音が全体の響きを支えているためか、合唱のハーモニーもきれいに溶け合い、余韻の消え際まで空気の振動が体感できる。低い音域から柔らかい響きに包み込まれる感触はとても心地良く、耳というより身体全体を優しく刺激してくる印象だ。
リッピング音源はどうだろう。ウッドベース1本の伴奏でペトラ・マゴーニが歌う「Bach Aire」は録音もとてもシンプルで、僅かなリバーブ以外に特別なエフェクトは使っていない。澄み切った声の感触とピチカートでリズムを刻むベースの関係が自然で、どの音域にも強調感がなく、大きめの音量で聴いてもまったくストレスを感じなかった。
最後にゼンハイザーのHD800を組み合わせてヘッドホンアンプとしての実力を確認した。基本的にUSB-DACの音と共通点が多く、情報量のゆとりと鮮度の高さは期待を裏切らない。そして、特筆すべきはハイエンドヘッドホンのポテンシャルを自在に引き出す駆動力のゆとりだろう。パワー全開のオーケストラから瞬時に大エネルギーを引き出しつつ、細部の描写が疎かになることがない。無帰還方式ならではの精度の高い空間再現にも特筆すべきものがある。
文:山之内 正
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。