コロナ放電処理とは
コロナ放電処理とは
コロナ処理による表面加工の歴史は古く、1950年代に既に報告されていました。しかし、その実用性の高さから、現在でもラミネート加工やプラスチックフィルムの加工に使われています。
コロナ放電処理とは、コロナ放電をしている部分にポリマーなどを挿入し、物質の表面に付いた微量の有機物を除去する方法です。表面に数ミクロンの小さな突起ができあがり、表面架橋接着力が向上し、塗膜の剥離を防ぐことができます。
また、コロナ放電処理ではポリマーの酸化が見られます。コロナ放電処理では濡れが起こり、液体と固体との界面相互作用が発生します。コロナ処理によりポリマー表面が酸化され、表面張力が高まるために濡れ性(親水性)が向上するのです。
コロナ放電処理が施されたフィルムは、表面の微妙な凹凸によって塗料のタレ落ちや塗膜の飛散を防ぎます。 たとえば、コロナ処理したフィルムとしていないフィルムに塗料を拭き付け、乾燥後、手でもみほぐして剥離の度合いを比較してみるとその違いがわかるはずです。コロナ表面処理済みのフィルムはもみほぐしをしても剥離があまりみられません。 一方でコロナ表面処理なしのフィルムは、もみほぐし後に多量の塗料剥離が発生します。
ポリマーフィルムやポリエチレンシートなどは、塗料の接着力が極めて低いという性質があります。そのため、これらの素材は化学物質には不活性で非透過性の性質を持ち、表面張力が低いため塗装をしても塗膜が持続しません。 そこで、コロナ放電処理を施すことで、強い表面エネルギーを発生させ密着性を高めるのです。
また、このコロナ放電処理は時間が経つほどに効果が弱くなってしまうため、塗装前の加工が最も効果的と言われています。その効果は数日、または数週間程度の持続力となり、それ以降ではふたたび塗料の接着力が落ちてしまうのです。 しかし、作業現場でコロナ放電処理を施し時間内に終わらせることは簡単ではありません。多くの作業現場では二度加工処理を行うことで対策をするのが一般的です。
コロナ放電処理における注意点を見てみましょう。
まず、加工の際に空気中でコロナ放電を行う必要があり、この際にオゾンが発生して作業者の健康を損なう恐れがあります。そのため、オゾンは活性炭に吸着し屋外に排気する方法が安全です。 さらに火災の恐れがあることから、コロナ放電処理を行う場所では火気を使用してはいけません。また、加工において処理むらや過剰処理に注意するとともに、処理後は時間経過と共に変化が大きくなるため処理後の保管温度や湿度にも注意が必要です。
コロナ放電処理が施された建築用シートについて
建築現場でコロナ放電処理が施されたシートを使用する場合、マスカーと呼ばれるものが使われます。これは塗装を行う際に使用し、余計な部分に塗料がつかないよう遮断するためのシートです。
マスキングテープと養生シートが一緒になった便利な資材で、シートの高密度ポリエチレンフィルム表面部分に、コロナ処理がなされています。手切れ性もよく、広範囲をカバーできるマスカーは、剥離時の糊残りも少ない点も特徴です。
フィルムやシートの塗料のタレや塗膜の飛散は、加工しやすさに大きな影響を与えます。そこで、コロナ放電処理を施してフィルムの実用性を高くする手法は、古くから用いられてきました。現在まで一般的に用いられているため、ぜひ試してみて下さい。