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機械要素の基礎講座

多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 歯車

1-12 遊星歯車装置のはたらき

遊星歯車装置は、太陽のまわりを惑星が回転するように、一組の互いにかみ合う歯車において、二枚の歯車がそれぞれ回転すると同時に、一方の歯車が他方の歯車の軸を中心として公転するものです。 ここで中心にある歯車を太陽歯車(サン・ギア)、まわりにある複数の歯車を遊星歯車(プラネタリ・ギヤ)といい、これら2種類の歯車は内歯車(インターナル・ギア)の内側で回転をします。 実際の動作では、これら3種類の歯車列のうち、どれか1種類を固定したときに他の2種類がかみ合うことで必要な変速を行います。なお、太陽歯車と遊星歯車は遊星キャリアとよばれる腕で連結されており、中心軸からの出力は遊星キャリアと一体化されて取り出されます。 なお、遊星歯車の数は3枚や4枚が多く用いられていますが、5枚以上の歯車が使用されるものもあります。

遊星歯車装置の特長として、平歯車を組み合わせた減速装置に比べて少ない段数で大きな減速比を得ることができること、入力軸と出力軸を同軸上に配置できることから、装置をコンパクトにできることや、かみ合う箇所が複数あるため大きな回転力を得ることができるなどの特長があります。 一方で歯車の枚数が多くなることから機構が複雑になり、正確に動作させるため歯車には高い精度が求められます。

実際の動作には次のような種類があります。プラネタリ形は内歯車を固定して、太陽歯車を駆動軸、遊星キャリアを従動軸としたものであり、遊星キャリアは太陽歯車と同じ方向に回転して減速されます。 ソーラー形は太陽歯車を固定して、内歯車を駆動軸、遊星キャリアを従動軸としたものであり、遊星キャリアは内歯車を同じ方向に回転して減速されます。また、スター形は遊星キャリアを固定して、太陽歯車を駆動軸、内歯車を従動軸としたものであり、内歯車は太陽歯車と同じ方向に回転して減速されます。

遊星歯車装置は、自動車のトルクコンバータ式のオートマチック・トランスミッションや自転車の内装型変速機、風力発電の増速機などに幅広く用いられています。ロータリーエンジンも遊星歯車を利用したものです。動きがイメージできる用途として、遊園地にある遊具のコーヒーカップがあげられます。


これらの動作を調べてみると、歯車を活用して複雑な機構を設計できていることに感心します。興味をもった方はぜひ調べてみると歯車の奥の深さを実感できると思います。

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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