機械要素の基礎講座

多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第2章 

2-2 ベルトの種類

ベルトは断面形状や材質の違いなどによって分類できます。平べったい長方形の断面をもつ布皮製の平ベルトは古くから、農業機械、繊維機械、工作機械などの動力伝達用として用いられてきました。 滑りが発生してしまうため、大きな動力を伝動することは他の種類に代わられましたが、現在でも軽負荷の伝動用として、自動改札機による切符搬送やATMによる紙幣搬送、オーディオ関連などに幅広く用いられています。

より大きな動力を伝達するために、ベルトとプーリの間の接触面積が増加することで摩擦力が大きくなるVベルトが登場しました。 Vベルトは家電製品から自動車、工作機械など工業製品に幅広く用いられています。材質もより丈夫な合成ゴムなどに変化し、耐熱性や耐油性、耐屈曲性などに優れた種類もあります。Vベルトを取り付ける円筒形の部品をVプーリといい、台形断面の側面の部分も含めて接触します。 VベルトやVプーリの寸法は規格化されており、必要なものを選定して用います。Vベルトの速度は毎秒40m/s程度まで、速度伝達比は7程度までのものが多く用いられます。Vベルトは伝動したい動力に応じて1本で用いるのが基本ですが。 複数のベルトによる2本掛けや3本掛けなどで用いることもあります。この場合、Vプーリにも複数の溝があるものを用います。

  • Vプーリ

モータ制御などが進化して、高精度の位置決め精度が要求されるような場面では、ベルトの滑りが問題になる場面が増加しました。そこで登場したのが平ベルトの内側に歯車のような歯をつけた歯付きベルトです。これをタイミングベルトと呼ぶこともあります。 歯付きベルトはかみ合う溝がついた歯付きプーリ(タイミングプーリとも呼ばれます)とかみ合って用いられるため、精密で安定した伝動を長時間可能にできます。また、軽量でコンパクト、低騒音という特長もあるため、その用途を広げています。 一方で金属製のチェーンなどに比べて、耐久性や剛性に欠けるため、使用場所によっては定期的な交換が必要になります。歯付きベルトは身近なところではプリンタや自動車エンジンまわりなどで見つけることができ、他にも工業製品に幅広く用いられています。

  • 歯付きベルト
  • 歯付きプーリ

Vベルト、歯付きベルトともに、継ぎ目のない環状で製造されるため、購入する際にはベルトピッチ周長をよく検討する必要があります。

執筆:宮城教育大学 教育学部 技術教育専攻 門田 和雄 准教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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