機械要素の基礎講座

多くの産業を支える機械の基礎として重要な「機械要素」。 歯車やベルト・チェーン、ばねなど多岐にわたります。本連載では、 それらの機械要素について、知っておくべき基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 機械要素の基礎講座

1-16 歯車の作り方~創成法

歯車の歯を一枚ずつ成形法に対して、歯を全体的に少しずつ成形する工作法を創成法といいます。これにはいくつかの方法がありますが、ここでは代表的なものとして、円筒の円周に歯形状の刃物をもつホブとよばれる切削工具を用いるホブ盤を紹介します。

ホブはモジュールや圧力角などに応じた多数の切れ刃をもち、これとブランクとがラックとピニオンのような関係でかみ合いながら、歯の創成を行います。加工の場面では、軸に取り付けられたホブが回転運動を行い、この軸に対して垂直の位置にある軸にブランクを配置します。ブランクが取り付けられた軸を上下に往復させることと、必要な切り込み量に応じてホブの軸に近づけることができます。ホブの回転速度に応じて、適切な回転速度でブランクを回転させることで、ホブの切刃がいつも同じ位置で接触するため、ここで切り込みを与えることで、歯車の歯が全体的に少しずつ創成されます。この回転速度は、ホブ盤ごとに規定されている歯車のギア比を調整することで決められます。一般的に、このホブ盤歯車の段取り換えでは、5枚程度の歯車を交換する作業が必要です。

ホブの切り込み量は全歯たけの寸法までであり、それ以上切り込んでしまうと歯形が崩れてしまいます。切り込み量を手動で操作するタイプのホブ盤では、操作者が適切な位置で切り込みを終える必要があります。実際の歯車工場では生産性を向上させるため、一度の加工で複数のブランクを取り付けて加工を行っています。

歯車ではかみ合う部分として重要となる歯面の状態がとても重要になります。ホブ盤などを用いて歯切りが終わった歯面の精度をさらに向上させるため、歯面に多数の歯溝をもつシェービングカッターとよばれる工具が用いられます。シェービングカッターと工作物となる歯車とは歯車研削盤に取り付けられ、軸交差角を与えてかみ合わせて回転させることによって生じる滑り作用で歯面を仕上げるのです。

ここまでが歯車加工において独自に必要な技術となりますが、この他にも材料を適当な温度と時間で加熱や冷却を行い、硬さや粘り強さを向上させる熱処理、めっきや塗装などで材料表面の性質を向上させる表面処理など、金属加工で一般的に施される技術も加えらながら歯車は完成します。

歯車の作り方

執筆:神奈川工科大学 門田和雄 教授

『機械要素の基礎講座』の目次

第1章 歯車

第2章 ベルトとチェーン

第3章 ばね

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