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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第1章 溶接の基礎

1-4 ひずみが発生する原因とひずみ取り

溶接組み立て品の寸法精度不良は、溶接によって発生する変形(溶接ひずみ)や溶接時のセッティング不良などが原因となります。

1. 溶接ひずみの発生メカニズム

溶接ひずみの発生メカニズムは、図4-1に示すコンクリート壁で固定されている中央の金属を加熱・冷却することによって生じる変化から理解できます(実際の溶接品の場合は、両側のコンクリート壁部分がほとんど熱の影響を受けない素材部で、金属部が溶接部となります)。

図4-1 溶接ひずみの発生メカニズム

図4-1 溶接ひずみの発生メカニズム

すなわち、

(1)図4-1(a)の状態で金属部を加熱すると、加熱された金属の原子と原子の結合力が弱まり、その分だけ原子と原子の距離が広がり同図(b)の破線部だけ伸びようとします。

(2)この伸びようとする部分は、周囲のコンクリート壁で押さえられ、設定された長さに圧縮されます(この時、本来なら伸びるべき分は幅方向に変形してビヤ樽形状に変形、冷却とともに幅方向の変形は取り去られ何の変化の無い状態に戻りひずみの発生は無いはずです。それが、加熱され高温の状態では、原子の結合力は弱く内部の原子の配列状態の変化でほぼ元の状態が維持されます)。

(3)加熱を停止し冷却していくと、加熱されたことで本来伸びるべき図4-1(c)の破線部だけ収縮しようとしますが変形の生じていない両側の壁で固定され、伸ばされた状態になります。

(4)冷却され結合力の回復した材料は、伸ばされた分を戻そうとする力を発生、この戻そうとする力が周囲母材の拘束力を超えると変形となって表れます(変形発生に到らない場合は材料内にその分だけ残留応力として残ります)。

2. 溶接ひずみ

溶接による変形は、周囲母材による拘束力の大きい長さ方向(縦変形)や幅方向(横変形)では発生しづらく、拘束力の作用しない面外方向で角変形や曲がり変形として発生します。また、周囲母材が変形しやすい柔らかい材料や薄板材では、座屈変形が発生します。このように、溶接組立て品では、溶接による変形や応力の発生は避けられないのです(こうした拘束状態とひずみ発生の関係をまとめて示したものが図4-2です)。

図4-2 溶接ひずみの発生形態

図4-2 溶接ひずみの発生形態

3. ひずみ取り

前項で示したように、溶接組み立て品では、溶接によるひずみ(変形)や応力の発生は避けられず、発生したひずみのひずみ取りが必要となります。

ひずみ取り作業は、(1)製品全体の形状をプレスで修正する、(2)収縮している部分をハンマーなどで叩いて伸ばし修正する、(3)伸びている部分を加熱・急冷処理(灸すえ)し、収縮させて修正する、などの方法が行われています。

ただ、先に示した溶接ひずみの発生メカニズムからすると、加熱し原子と原子の結合力を弱めた状態の材料を叩いて原子配列状態から形状修正を行い、急冷でその形状を固定させるような処理が有効になると考えられます。

一方、残留応力の発生は、(1)溶接後に機械加工するような製品では、加工による応力の局部的な開放で応力バランスが崩れ、加工による寸法精度の確保が難しい、(2)製品により、残留応力が強度に悪影響を及ぼす、といった問題を発生させます。そこで、これらの現象が問題となる溶接品では、「応力除去焼きなまし」のような熱処理が必要となります。

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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