工具の通販モノタロウ 溶接の基礎講座 ろう材の選択とトーチろう付け作業のポイント

溶接の基礎講座

ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-14 ろう材の選択とトーチろう付け作業のポイント

ろう付け(ろう接)は、ハンダ付け作業で行うように母材となる銅線は溶かさず、この固体の銅線の間の隙間に低い温度で溶融するろう材(ハンダ)を液体状態にして流し込み接合する方法です。 この方法では、通常、目的とする接合状態を得るため、ろう材とともにろう付け面を清浄にして活性化するフラックスを使用します(最近は、こうしたフラックスをろう材中に包み込んだものや、ろう棒に被覆したものが市販され、作業性が大幅に改善されるようになっています)。

1)各種材料に対する適正ろう材、フラックスの選択

ろう材はその溶融温度により、450℃以下で溶融するハンダなどの「軟ろう材」と、450℃以上で溶融する銀ろうや黄銅ろうなどの「硬ろう材」に分類されます。一般的に、接合強度が必要とされる製品には硬ろうが用いられ、 接合する目的に応じ、(1)一般的な鋼や合金鋼、銅合金などの接合には「銀ろう(カドミウムの弊害が許容される場合は作業性の良いBag1相当品を、カドミウムを嫌う食品機械などの場合ではカドミウム含有量0のBag7相当品などを選択します)」、 (2)銅、銅合金および各種炭素鋼、鋳鉄などを安価に接合したい場合は「黄銅ろう」(銅、銅合金の場合には、フラックス無しでろう付け可能な「リン銅ろう」が銅配管作業などで多く使われます) (3)接合部に高温性能が必要とされるステンレス鋼や耐熱鋼、ニッケル合金などの接合には「ニッケルろう」、(4)アルミやマグネシウムには、それぞれ「アルミろうやマグネシウムろう」、を使用します。

一方、ろう付け作業では、ろう材に適したフラックスが必要で、このフラックスはろう材より50℃程度低い温度で溶融し液体状態になるよう作られています(したがって、フラックスは、ろう付け面の清浄とともに、 ろう材の添加するタイミングを示す重要な働きも持っており、使用するろう材の溶融温度に見合うものをろう材とセットで購入すると良いでしょう)。 なお、ティグ溶接やミグ溶接を利用して行うアークろう付けの場合も、フラックスなしでろう付けが可能となる「エバジュウル(銅にシリコン、マンガンを加えた銅合金)ろう材」を使用することで高能率のろう付けが可能となります。

2)接合部の加熱とろう付け結果

図14-1は、通常のガス溶接用トーチを使用する手動トーチろう付けにおける、接合部の加熱状態と作業結果の関係を示すものです。図の結果からわかるように、(1)適正で均一な加熱が行われ、良好なろう付け結果が得られたものが図の(a)、 (2)局部的に加熱不足部を生じさせ、ろうの回り不足を発生しているものが図の(c)、 (3)局部的な加熱オーバー部を発生、フラックスの焼損(黒い部分)でろうが回りきっていない箇所やろうが回ったものの回ったろう材が焼損(やや白い部分)した箇所のあるものが図の(b)です。 このように、手軽に利用できる手動トーチろう付けでは、接合部の加熱状態により接合結果が大きく左右されることがわかります。

図14-1 手動トーチろう付けによる作業結果

図14-1 手動トーチろう付けによる作業結果

手動トーチろう付け作業では、作業者がフラックスの溶融状態などから接合部の加熱状態を判断し、適正な温度が均一に保たれるよう、(1)中性炎の手前のわずかな炭化炎で、しかも温度の高い白心部から離した状態で、 (2)加熱位置を順次変えながら作業する、などにより良好な接合結果を得ています。一方、ロボットや専用装置を利用する自動ろう付け作業では、図14-2のようにできるだけ製品形状に合わせた状態で全体を加熱できるよう熱源をリング状にするなどの工夫が必要になります (これらの接合ではフラックスを塗布したリング状、箔状、粉末状のろう材を使用します)。 なお、より均一な加熱状態で安定したろう付け結果を得るには、抵抗ろう付けや炉中ろう付け(特に水素雰囲気内で行う炉中ろう付けでは、接合部の酸化が無く、外観的にも品質の良いろう付け結果が得られます)を利用します。

図14-2 接合部の均一加熱が可能なように工夫された加熱ヘッド

図14-2 接合部の均一加熱が可能なように工夫された加熱ヘッド

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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