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ベアリングの内部すきまについて

内部すきまと規格値

内部すきまと規格値

転がり軸受の運転中における内部すきま(すきまともいう。)の大小は、疲れ寿命、振動・騒音、発熱など軸受の性能に大きく影響する。したがって、軸受の内部すきまの選定は、形式・寸法の決った軸受にとって、重要な検討項目の一つである。そのすきまとは、軸受の内輪・外輪と転動体との間の遊び量である。すなわち、内輪、外輪のいずれか一方を固定し、他方の軌道輪を上下又は左右方向に動かしたときの動き量である。ラジアル方向及びアキシアル方向の動き量を、それぞれラジアルすきま、アキシアルすきまという(図1)。

一般に、安定した測定値を得るため、軸受に規定の測定荷重を加えて、すきまを測定する。そのため、測定されたすきまの値は、測定荷重による弾性変形量(接近量)分だけ、理論内部すきま(ラジアル軸受では、幾何すきまともいう。)の値より、わずかではあるが大き目になる(測定すきまと呼んで区別することがある)。したがって、理論内部すきまは、この弾性変形によるすきまの増加量を補正して求めることになる。ころ軸受では、この弾性変形量が小さいので無視することができる。通常、取付け前のすきまは、理論内部すきまの値で規定されている。

内部すきまの選定

各表に示した内部すきまの中で、CNすきまの値は、一般的な使用条件に適するように定められており、この値を基準にして小さい側は、C2、C1 の順に小さい値となり、大きい側はC3、C4、C5の順に大きくなっている。一般的な使用条件とは、内輪にしめしろを与えて取り付けた軸受に、普通荷重(P≒0.1Cr)以下の荷重が加わり、内輪の回転数(min-1)が、軸受寸法表の許容回転数の、ほぼ50%以下の場合をいう。なお、電動機の騒音対策上、軸受のラジアルすきまの範囲をできるだけ小さくし、かつ、すきまの値も小さく採った電動機用深溝玉軸受及び円筒ころ軸受のラジアルすきまも決められている軸受の内部すきまは、はめあいや運転中の温度条件などによって変ります。

  • はめあいによるラジアルすきまの減少量と残留すきま内輪又は外輪を、軸又はハウジングにしめしろを与えて取り付けると、軌道輪が膨張又は収縮し、ラジアルすきまは減少する。この減少量は、軸受の形式、寸法、軸及びハウジングの形状・寸法によって異なるが、おおよそしめしろの70~90%である。理論内部すきま ΔO から、このはめあいによるすきまの減少量を差引いたすきまを、残留すきま Δf という。
  • 内輪・外輪の温度差によるラジアルすきまの減少量と有効すきま軸受の回転により発生した摩擦熱は、軸及びハウジングを通して逃げる。一般には、軸よりハウジングのほうが放熱条件が良いので、外輪のほうが温度が低く、内輪及び転動体の温度は、外輪より5~10℃高くなる。また、中空軸に蒸気が通って軸受に軸から熱が伝わる場合や、高速回転の場合などでは、内輪、外輪の温度差は、更に大きくなる。内輪と外輪とに温度差があると、軌道輪の熱膨張の差によって、ラジアルすきまは減少する。このおおよその減少量は、次の式で求めることができる。
  • δt:内輪・外輪の温度差によるラジアルすきまの減少量(mm)
  • α:軸受鋼の線膨張係数≒12.5×10-6(1/℃)
  • Δt:内輪・外輪の温度差(℃)
  • De: 外輪の軌道径(mm)

残留すきま Δf から、この δt を差引いたすきまを、有効すきまΔという。

理論的には、この有効すきま Δ がわずかに負であるとき、疲れ寿命は最も長くなるが、実用的には、この理想的な状態を持続して軸受を使用することは困難である。また、負のすきま量が大きくなると、疲れ寿命の低下が著しいことから、一般には、有効きまが零よりわずかに大きなすきまとなるように軸受すきまを選定する。単列アンギュラ玉軸受、円すいころ軸受などを対向させて使う場合にも、予圧して使用する場合を除いて、有効すきまがわずかに存在するようにする。また、片側につばのある円筒ころ軸受を2個対向させて用いる場合には、運転中の軸の膨張を考慮して、あらかじめアキシアル方向に適当なすきまを与えておく必要がある。

使用条件 用途例 軸受けすきまの例
軸のたわみが大きい場合 自動車半浮動後輪 C5相当
中空軸に蒸気が通る場合や、ロールが加熱される場合 製紙機ドライヤ C3,C4
圧縮機テーブルローラー C3
衝撃、振動が大きい場合
内輪、外輪ともにしまりばめする場合
車両用主電動機 C4
振動ぶるい C3、C4
液体継手 C4
トラクター終減速装置 C4
内輪、外輪ともにすきまばめする場合 圧縮機ロールネック C2相当
回転時の音響・振動を厳しく抑える場合 小型電動機(特殊仕様) C1、C2、CM
軸の振れを抑えるなど、組立後のすきまを調節する場合 旋盤主軸 CC9、CC1

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