重防食塗装

鉄塔や橋梁、高速道路などの構造物は、風雨・酸性雨・寒暖差等のある過酷な環境に置かれ、また何十年もの長きに渡ってその性能を保持する高い耐久性が求められます。そのような場合に活用されるのが、構造物の耐久性を高める重防食塗装です。ここでは、重防食塗装の概要や、ここ数年の展開についてご紹介します。

重防食塗装とは

そもそも重防食塗装は、どのような工法を指すのでしょうか。はじめにその概要をご説明いたします。

重防食塗装のニーズ

重防食塗装とは、橋梁、鉄塔や高速道路など、屋外環境で高寿命・高剛性を期待される建造物に使われる防食塗装のことです。防食塗装を使うべき構造物は高度経済成長期以来、日本中に無数に建造されています。

そしてその影響でここ数年、高度経済成長期に急増した建造物が一斉に高齢化を迎えることが、全国各地で大きな問題となりつつあることは押さえておくべきでしょう。 そのため、100年単位の長期の耐用年数を期待される建造物においては、その耐久性の維持、メンテナンスに要するコストなどを勘案すると、より高効果で耐用年数の長い腐食対策が非常に重要となってくるのです。

重防食塗装の定義

重防食塗装に統一的に定められた定義はありませんが、一般的には屋外や海上などの過酷な腐食環境にある鋼構造物に対して使用する、耐用年数の長い防食塗装のことを指します。その多くは、構造物の表層に高粘度の防食塗料を厚く塗装することによって、構造物の腐食を防ぎ長寿命化を実現するものです。 また、以下のような定義も存在します。

  1. 有機、無機のジンクリッチペイント、金属溶射皮膜、溶融亜鉛メッキなどの防食下地を要する
  2. 腐食の原因物質から対象物を防護する、エポキシ樹脂系などの下塗り塗料の層を持つ
  3. 高耐候性のポリウレタン樹脂、ふっ素樹脂などの塗料を上層とする
  4. 極めて防食性能・耐候性能の高い塗装であり、耐用年数は10年~30年以上である
  5. 膜厚は下地を含め、250~1000μmである
重防食塗装の構成

重防食塗装は、単層ではなく複数の目的の異なる塗料を数層に重ねることで、強い防食性能を得る塗装です。その構成は以下のようになっています。

  • 防食下地
  • ジンクリッチペイントや、金属溶射皮膜、溶融亜鉛めっきなどの層。しっかりと素地調整を行った上に塗装します。この層は犠牲防食層の役割を持ち、また緻密層の形成やpHをアルカリに保つことが可能です。
  • 下塗り
  • 水や酸素、塩化物などの各種の腐食原因物質を、防食対象物に接触させずに保つための層です。エポキシ樹脂、ガラスフレーク含有エポキシ樹脂、弱溶剤系・超厚膜系などのエポキシ樹脂が主な素材となります。
  • 中塗り
  • 下塗り塗料と上塗り塗料の中間となり、両者の付着性を高める層です。また、上塗り塗料の最終的な見え方を調整するため、色相を調整する役割を持たせることもあります。
  • 上塗り
  • 塗装の最上部になる層です。光沢や色合いを調整し、構造物の美観を保ち、下層の塗装を紫外線から守る役割があります。高耐候性のポリウレタン樹脂、フッ素などが主な素材です。

最近の重防食塗装

近年では環境問題への関心が世界的に高まり、環境負荷の少ない事業への転換が重要視されていますが、建築業界・土木業界においてもこの動きは波及しています。最近の重防食塗装の動向はどのようなものでしょうか。

たとえば、2001年には環境や人体に対して悪影響を及ぼすおそれのある化学物質の事業所外への排出量を、事業主が把握して報告する制度の運用が開始されていました(PRTR制度)。現在のPRTR制度は、462種類の物質が対象となっています。重防食塗装においても、この制度に従って特定物質の使用に注意しなければなりません

また、日本では高度経済成長期に大量に建造された構造物の高齢化に伴い、そのメンテナンス(塗装塗替え)の負担がここ数年で急増しています。 とくに構造物の周囲への悪臭対策、塗料の環境負荷への対策などが、これまで以上に深刻なレベルで要求されているのは、大きな問題だといえるでしょう。具体的には、第二種有機溶剤に分類される塗料について、樹脂成分を改善し引火性や有害性を低下させた製品を使用することなどが求められています。

まとめ

重防食塗装は、橋梁、鉄塔、高速道路など、我が国の基盤を支える重要な構造物を腐食から守る重要な概念です。その概要や近年のトレンドを、上記を参考に押さえておきましょう。

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