塗料・塗装の何でも質問講座
建築物や自動車など、私たちの周りにある多くのものは「塗装」されています。本連載では、主に塗装・塗料の欠陥と対策についてご紹介していきます。
第1章 塗料・塗膜の白化現象

1-7 テーブル面の白いシミ

前回までは塗装時や塗装過程での白化現象を取り上げましたが、今回と次回は我が家で起きた木工テーブル面の白化現象を取り上げます。6)読者の皆さんで自分も経験したぞと言う声が聞けたら嬉しい限りです。この機会を利用して、木工塗装がいかに行われているかも紹介したいと思います。

質問(19)

20年程前に購入した我が家のちゃぶ台(天然ゴム集成板、ウレタン塗装と書かれた外径900mm円形の木工テーブル)ですが、何気なく塗装面を見ると、図1-26に示す白いシミ(白化)ができていました。直ぐに、原因探しです。 現象を整理すると、1:白いシミはちゃぶ台の真ん中付近に、外径約150mmの二重円形で、1ヶ所のみ、2:この部分の塗膜は膨らんでいたり、劣化していない、3:白化部分をコンパウンドで磨いても一向に修正できませんでした。

そんなことよりも家族は土鍋を持ってきて、「大きさがぴったりだから、犯人は土鍋だ」と得意げでした。私は「犯人は土鍋ではなく、水布巾を敷き、その上に熱い土鍋を置いて寄せ鍋を楽しんだ自分達だ」と言って、何だか盛り上がっていたようです。

では、ここから科学捜査を始めたいと思います。まず、白化はどこで起きたのでしょうか。どのように解析したら発生場所を特定できますか。

図1-26 木工塗装テーブル面の白いシミ

図1-26 木工塗装テーブル面の白いシミ

答え(19)

素地の木材は無垢板(むくいた)ではなく、集成材であること。無塗装の集成材(板材)に対して、再現実験をしてみたいと思います。実験をする時には、要因を決めなくてはいけません。水布巾を敷いたのは、鍋の安定性を重視したからです。 白化部分には、水分、圧力、温度が作用しています。アイロンを使用すれば、温度と圧力を可変できることから、図1-27に示すように、温度を計測しながら実験をすることにしました。

図1-27 白化再現試験

図1-27 白化再現試験

白化は木材か、それとも塗膜のどの層で起きたのかを見極めたいと思いますが、その前に木工塗装の作業手順と塗装系を図1-28に示します。(6)塗装とは、被塗物の種類にかかわらず一般に、下塗り-中塗り-上塗りの順に塗り重ね、3層膜のチームワーク力で要求される目的を達成することを理解してください。

図1-28 塗装手順と塗装系の例 (6)

図1-28 塗装手順と塗装系の例 (6)

つや消し黒エナメルを塗装した鋼板それぞれに、市販の木工用ラッカーの下塗り、中塗り、上塗り塗料を塗り、各試験体を調製しました。3層膜のどの層で白化が起きるかどうかを調べました。下地に黒エナメルを使用したのは、下地からの散乱光を防ぐためです。早く結果を知りたいですよね。

次の結果が得られました。(図1-29参照)

  • (1) 白化したのは中塗り塗膜のみであった。
  • (2) 加熱温度が高い程、早く白化し、その程度も大きかった。
  • (3) 素地木材の存在は白化と無関係であり、木材単独でも白化しなかった。
図1-29 アイロンによる白化再現試験結果 (7)

図1-29 アイロンによる白化再現試験結果 (7)

質問(20)

何故、中塗り塗膜のみが白化したのか、興味が涌いてきました。木工塗装の中塗りもクリヤ(顔料未充てん)だと思いますが、下塗りや上塗りと比べてどこが異なりますか。

答え(20)

木材用の下塗り塗料はウッドシーラと呼ばれており、素地に良く付着し、塗料の吸い込みを防いだり、着色、目止めを安定化させます。中塗りはサンディングシーラと呼ばれており、多孔質な木材素地を平滑に仕上げるために塗装後、研磨します。その時に研磨しやすいように固体粒子が充てんされています。 分析はしていませんが、固体粒子は恐らく、ステアリン酸亜鉛(以下Zn-Stと略す)だと思います。Zn-Stと塗膜樹脂との屈折率差が小さいから、透明な塗膜になります。
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/tosouqa_0101/にある既報の図1-4をご覧ください。

質問(21)

固体粒子を充てんした方が研磨しやすいことは何となく感覚的に理解できますが、充てんされたZn-St粒子が白化の原因だと考えると、白化の機構はどうなりますか。

答え(21)

Zn-St粒子と被膜成分(以下、バインダーと略す)間の界面に水が侵入し、可視光線を散乱するために白化したと考えるのが妥当だと思います。白化の機構図を図1-30に示します。

図1-30 白化機構 <sup>(7)</sup>

図1-30 白化機構 (7)

  • 〔用語解説〕
  • (1) 無垢板(むくいた):丸太から切り出した板の総称で、柾目板と、板目板に大別されます。
  • (2) 集成材:木質系材料の1種であり、板材または小角材を繊維方向に接着し、長大材にしたものです。
  • (3) 木質系材料:木材を二次的に加工した製品の総称で、集成材の他、合板、単板、合板に化粧用単板を貼り付けた天然木化粧合板、パーティクルボード、MDFやHBに代表されるファイバーボードなどがあります。
〔引用・参考文献〕 (文献番号は第1回からの通しです)
(6)坪田実:”ココからはじめる塗装“, 日刊工業新聞社, p.12-13 (2010)
(7)坪田実, 長沼桂:職業能力開発大学校紀要 第38号A, p.61-66 (2009)
執筆:川上塗料株式會社 社外取締役 坪田実

『塗料・塗装の何でも質問講座』の目次

第1章 塗料・塗膜の白化現象

第2章 塗料と塗装のことはじめ

第3章 いろいろな塗り方

第4章 塗料のルーツと変遷

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