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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-18 アークの発生と安定維持作業

被覆アーク溶接では、遮光用ヘルメットなどで顔を覆った真っ暗やみの中での作業となり、しかも溶接開始時のアークを発生させるための溶接棒と母材面との接触で発する「バチィ」の音、 まぶしいアーク光で驚き、次の動作に移れなくなります(したがって、特に被覆アーク溶接作業では、こうした状態での作業に慣れることが先ず必要となります)。

1)アークの発生

被覆アーク溶接では、アークの発生時に溶接棒と母材がくっつき、正常な溶接作業に移れなくなることがたびたび起こります。そのため、被覆アーク溶接におけるアークの発生は、図18-1のような各種の方法で行われます。

いずれの方法の場合も、アーク発生ミスにより、非常に危険なアークストライク欠陥を発生させる危険性が高く、そのため、これらの操作は、常に同じ位置の狭い範囲で繰り返し行うことが必要となります。

図18-1 被覆アーク溶接でのアーク発生法

図18-1 被覆アーク溶接でのアーク発生法

図18-2が通常の交流被覆アーク溶接での発生直後のアーク状態で、小さく不安定で直後に消滅したり溶接棒と母材の短絡が発生したりして正常な作業状態に移れなくなります。 したがって、交流被覆アーク溶接では、こうしたアークの発生操作を数回繰り返す必要があり、目的の位置で確実にアーク発生ができるよう繰り返し練習することが必要となります。

図18-2 アークの発生時のアーク状態

図18-2 アークの発生時のアーク状態

2)適正アーク長さの維持作業

溶接開始時の不安定なアーク状態をクリアーしアークが発生できたら、溶接棒と母材との短絡を生じさせないため、わずかに「ボー」の音となるやや長いアーク長さにしてアークを安定させます。 アークが安定したら、少しずつアークを短くし、「パチィ、パチィ」のクリアーな連続音の適正なアーク長さ状態にもっていきます。

この適正なアーク長さの溶接では、図18-3のように棒先端とプール表面の間に明瞭なアークが観察でき、このアークフレームの外側に明るく輝く高温のスラグから低温になった黒色スラグが形成されます。

図18-3 適正アーク長さでの溶接

図18-3 適正アーク長さでの溶接

一方、長いアーク長さの場合は、「ボー」といったアーク音と図18-4のように明るい広がったアークが不安定に変化し、高温のスラグが飛ばされアーク直下にはプール溶融金属が見えるようになります。 逆に、短いアーク長さの場合は、「ピチィ、ピチィ」のアーク音で、図18-5のように明るいアークはほとんど観察されず、高温のスラグが棒先端部に近づいた状態となります (このように、被覆アーク溶接作業では、瞬時、瞬時の溶接状態を目と耳で把握し、アーク長さの良否を判断して常に適正に保つ溶接を行います)。

  • 図18-4 長いアーク長さでの溶接
  • 図18-4 長いアーク長さでの溶接
  • 図18-5 短いアーク長さでの溶接
  • 図18-5 短いアーク長さでの溶接


執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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