グリースの種類と特長
グリースとは
グリースは、半固体状態の潤滑剤です。一般的にグリースは、高い荷重がかかる機械をはじめ、低い速度で回転する機械の潤滑に用いられ、軸受やベアリングに使用されたり、接触面が動くために潤滑剤の膜の付着を保つのが難しい摺動面に使用されたりします。機器の容器であるケーシングに充填し、摩耗を減らす働きをします。グリースがケーシングからなくなってしまうと、機械に異常な熱が発生したり摩耗が起ったりするため、機械トラブルにつながってしまいます。
グリースを構成する成分は、「増ちょう剤」や「基油」、「添加剤」です。基油である液体潤滑剤に、カルシウムやナトリウムといった増ちょう剤を均一に拡散させることによって、半固体状・固体状にしたものです。また、グリースを構成する「増ちょう剤」や「基油」によって種類が異なります。
グリースの種類-増ちょう剤別
増ちょう剤とは、基油を半固体状態にするものです。増ちょう剤の種類は大きく分けて「金属石けん系」と「非石けん系」の2種類あります。増ちょう剤の配合量は、基油との親和性やグリースの硬さによって変わりますが、5~20質量%程度が一般的とされています。 グリースの硬さを表す数値を「ちょう度」と言い、下記の通り、ちょう度範囲によりちょう度番号で分類されております。混和ちょう度範囲の値が小さいほどグリースは硬くなり、ちょう度番号は大きくなります。
ちょう度番号 | 000号(No.000) | 00号(No.00) | 0号(No.0) | 1号(No.1) | 2号(No.2) | 3号(No.3) | 4号(No.4) | 5号(No.5) | 6号(No.6) |
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混和ちょう度範囲 | 445~475 | 400~430 | 355~385 | 310~340 | 265~295 | 220~250 | 175~205 | 130~160 | 85~115 |
状態 | 半流動状 | 軟らかい | やや軟らかい | 普通 | やや硬い | 硬い | とても硬い |
また、増ちょう剤の種類によって、耐水性や耐熱性、せん断安定性など、さまざまな性能が左右されます。
石けん系グリース
- カルシウム石けんグリース
- シャーシーグリースとも呼ばれています。カルシウム石けんを増ちょう剤とし、耐水性には優れていますが、耐熱性は乏しいのが特徴です。車両の足回りや比較的低速・低荷重の一般的な潤滑箇所や摺動部に適しています。
- リチウム石けんグリース
- リチウムグリースとも呼ばれています。リチウム石けんを増ちょう剤とし、耐水性・耐熱性・機械安定性に優れているのが特徴です。万能グリースとして、高速ベアリングや一般的な潤滑箇所や摺動部など、幅広い用途に適しています。
- 二硫化モリブデングリース
- リチウムグリースに二硫化モリブデンを配合し、耐荷重性能を向上させたグリースです。二硫化モリブデンが金属面に付着し、始動時の油切れや不意の荷重から起こる「かじり・磨耗・焼付」を防ぎ、部品寿命や給脂間隔を延長します。高速・高荷重の潤滑箇所や摺動部に適しています。
- リチウムコンプレックスグリース
- 水酸化リチウムに二塩基酸・脂肪酸を反応させた石けんなどを増ちょう剤としたグリースです。耐水性・耐熱性・防錆性に優れ、リチウムグリースと比べると、高温での条件下で使用できるもの特徴です。グリースはある温度に達すると流動状になりますが、その温度である滴点が260℃以上あるとされています。
- アルミニウムコンプレックスグリース
- 水酸化アルミニウムにステアリン酸・芳香族カルボン酸を反応させた石けんを増ちょう剤としています。とても細かい繊維の構造を持っているのが特徴です。滴点は200℃以上とされており、耐水性・耐熱性・せん断安定性に優れているのも特徴です。
非石けん系グリース
- ウレアグリース
- ウレアグリースは、ウレア結合を2個以上持っているものを増ちょう剤としたグリースです。ウレアグリースはリチウム系グリースより耐水性、耐熱性に優れている点が特徴です。高温条件下の軸受や摺動部に使われています。
石けん系 | 非石けん系 | ||||||||
カルシウム石けん | リチウム石けん | カルシウムコンプレックス石けん | アルミニウムコンプレックス石けん | リチウムコンプレックス石けん | バリウムコンプレックス石けん | ベントナイト | ウレア | PTFE | |
耐熱性 | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐水性 | ○ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
せん断 | △ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ |
安定性 |
グリースの種類-基油別
潤滑油のベースとなる油は、ベースオイルもしくは基油と呼ばれています。基油は大きく分けると、「鉱油系」「合成油系」に分類され、鉱油系の基油は、石油の潤滑油の留分を精製したものです。成分によって、「パラフィン系」「ナフテン系」の2種類に分かれます。 一方、合成油系の基油は、化学合成によって製造されたものが一般的です。鉱油系の基油と比べると高価なため、鉱油系のベースオイルでの対応が困難な場合や、使用用途に最適な特性のある合成油が使われます。ここでは、基油別に分類したグリースの代表的なラインアップをご紹介します。
- パラフィン系ベースオイル、ナフテン系ベースオイル
- 現在では、鉱油系の潤滑油を基油としたグリースが一般的とされています。
- エステル系合成油
- ジエステルやポリオールエステルなどが、エステル系合成油に該当します。特徴としては、潤滑性に優れ、低い温度から高い温度まで、広い温度範囲で使用ができる点とされています。
- 合成炭化水素油
- 低い温度から高い温度まで、広温度の範囲で使用できるのが特徴です。対ゴム・対樹脂性に優れている反面、天然ゴムやEPDMには適していません。
- ポリグリコール系合成油
- ゴムへの影響が少ないため、ゴムに触れる用途に使用できるのが特徴です。また、EPDMをはじめ、合成炭化水素油が適さない天然ゴムにも使用が可能です。
- シリコーン系合成油
- 熱や酸化の安定性に優れ、広い温度の範囲で使用が可能。ただし、鋼対鋼の境界潤滑性には劣っています。
- フッ素系合成油
- 現在のところ、耐熱・酸化安定性に最も優れたグリース。薬品への耐性にも優れている点が特徴です。ただし、高価である点が欠点とされています。高温乾燥炉・化学プラント・複写機ヒートローラーなどへの使用に適しています。
鉱 油 | 合成油 | |||||
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合成炭化水素油 | エステル系合成油 | ポリグリコール系合成油 | シリコーン系合成油 | フッ素系合成油 | ||
耐熱性 | △ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
低温性 | × | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
潤滑性 | ○ | ○ | ◎ | ○ | × | ○ |
対ゴム性 | △ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ |
対樹脂性 | △ | ◎ | × | × | ◎ | ◎ |