冷媒ガスの種類と用途別代替冷媒一覧
冷媒ガスとは
冷媒ガスとは、エアコンが室内の気温を上げたり下げたり、冷蔵庫が庫内を冷却したりする仕組みにおいて使用されている、各種の物質のことを指します。
物質が液体から気体に変化する時には周囲から熱を奪い(気化熱・蒸発熱)、反対に気体から液体に変化する時には周囲に熱を放出します(凝縮熱)。冷媒ガスとして使用される各種の物質は、常温下では気体の状態をとり、圧力を加えると液化します。 冷媒ガスの持つこの仕組みを上手く活用したのが、エアコンや冷蔵庫といった空間の温度調節を行う機器です。
冷媒ガスとしてもっとも一般的に用いられるのはフロン類と称される各種のガスです。フロン類は炭素および水素、フッ素などのハロゲンを含む化学的にきわめて安定した化合物で、1930年代から広く用いられてきました。 しかし、オゾン層破壊の原因となることを理由として、20世紀後半から特定物質の生産中止を始めとするさまざまな規制が設けられています。
冷媒ガスの種類
冷媒ガスとして使用される物質にはいろいろなものがありますが、大きく3つの種類に分けることができます。
R12、R502などに代表される、古くから用いられている冷媒ガスです。低温冷凍機、カーエアコン、電気冷蔵庫などに使用されてきました。しかし、オゾン層に対する破壊程度が高いため、1995年末にはすでに生産中止となっています。
オゾン層破壊係数(※)は0.6から1.0です。
R22などに代表される冷媒ガスで、パッケージエアコンやルームエアコンに用いられています。水素を含んでいるためオゾン層への影響が比較的小さいのですが、1996年からは生産規制され、2020年には全廃される予定です。
オゾン層破壊係数は0.055です。
R410A、R32、R404A、R407C、R507A、R134aなどの冷媒ガスです。ルームエアコンとしてR410A、カーエアコンとしてR134aが使用されるほか、パッケージエアコン、電気冷蔵庫、各種冷凍機などで広く用いられています。 これらのHFCは、CFCやHCFCと違って塩素を含んでおらず、オゾン層破壊の影響がない代替的冷媒ガスであり、オゾン層破壊係数は0です。ただし、地球温暖化に影響を及ぼす温室効果ガスのひとつであると考えられています。 そんなHFCのうちR32は、地球温暖化への影響も少ない冷媒であるとして、近年注目を集めている物質です。
※オゾン層破壊係数とは
オゾン層に与える破壊の影響を、CFC-11を基準値1.0とした場合の係数
主な冷媒用途 | 規制冷媒 | 代表的な代替冷媒 |
---|---|---|
パッケージエアコン | R22(HCFC)※1 | R407C(HFC) R410A(HFC) R32(HFC) |
ルームエアコン | R22(HCFC)※1 | R410A(HFC) R32(HFC) |
低温冷凍庫 | R22(HCFC)※1 R502(CFC)※2 |
R404A(HFC) R507A(HFC) |
カーエアコン | R12(CFC)※2 | R134a(HFC) R1234yf(HFO)(欧州車では導入済み) |
業務用冷蔵庫 | R12(CFC)※2 R502(CFC)※2 R22(HCFC)※1 |
R134a(HFC) R404A(HFC) R410A(HFC) |
※HFC冷媒はまだまだ温暖化係数が高いので、今後は温暖化係数の低い冷媒の開発が急務となっている。
※1…2020年全廃
※2…全廃
新冷媒R32とは
R32とは、先述した通り、オゾン層破壊の影響がないHFC類の冷媒ガスの中でも温暖化への影響が少ないガスです。その先進的な機能のため「新冷媒」と呼ばれています。
他の冷媒は混合冷媒が主で、冷媒漏れによって混合率が変わると上手く冷媒として作用しなくなるのが難点です。一方R32は単一成分から成る冷媒であるため、冷媒としての機能が安定しています。万が一冷媒漏れを起こしても追加補充すれば元通りの機能を取り戻せるため、取り扱いは極めて容易です。
R32の気化時の必要圧力はやや高めで、他の一般的なHFC類の冷媒ガスに比べると1.5倍ほどです。また、オゾン層破壊への影響はないものの、地球温暖化への影響はわずかながらあるとされているため、回収の義務があります。
冷媒ガスにはさまざまな種類がありますが、オゾン層破壊・温暖化など地球環境への影響の程度はさまざまです。R32のような、より環境への悪影響が少ない冷媒ガスは、今後ますます注目されていくことでしょう。