工具の通販モノタロウ 建築設備配管工事の基礎講座 ビルマルチ空調用冷媒配管の耐圧・気密テスト

建築設備配管工事の基礎講座

空調設備や換気設備、給排水衛生設備の血管となる「配管」。本連載では、配管方式の分類から配管工事・配管材料の種類まで、現場や商品選定時に役立つ知識を紹介していきます。
第5章 配管のテストと試運転

5-3 ビルマルチ空調用冷媒配管の耐圧・気密テスト

ビルマルチ空調用冷媒配管からの「冷媒」の漏洩を防止することは、「品質保証(QA:Quality Assurance)」の観点や「地球環境保護」の観点からも、極めて重要なことである。わが国における「ビルマルチ空調」は、「オフィスビル空調システム」として投入以来、この20~30年でその搭載冷媒も、「ODP(オゾン層破壊係数)=0」を目標として、R22(HCFC冷媒)⇒R407C(混合冷媒)⇒R410A(混合冷媒)⇒R32(HFC冷媒)と、目まぐるしい変遷を遂げている。

ちなみに、クリーンルームにも「クリーンルームの4原則」という原則があると同様に、ビルマルチ空調用冷媒配管にも「冷媒配管の3原則」がある。具体的には、1.冷媒配管内部に「水分」がないこと⇒冷媒配管内部が「ドライ(乾燥状態)」であること、2.冷媒配管内部にゴミがないこと⇒冷媒内部配管が「クリーン(清浄)」であること、3.冷媒配管内部からの「冷媒漏れ」のないことの「3原則」である。

この中で、「3.冷媒配管の気密保持」は、冷媒の漏洩防止目的のために特に重要で、冷媒配管には「水配管」とは少し異なる「耐圧試験」および「気密試験」が実施されている。冷媒配管の気密試験には、「ガス圧試験」をすると決められており、使用ガスには「アルゴンガス」と「窒素ガス」があるが、使用するガスは価格などの面から、一般に「窒素ガス」が採用されている。

【注意】「酸素ガス」は非常に危険なので、絶対に使用しないこと!

(1)冷媒配管の耐圧試験圧力:(1)R410C冷媒の場合⇒設計圧力:3.2MPa・試験圧力:3.2MPa以下、(2)R410A冷媒の場合⇒4.15MPa・試験圧力:4.15MPa以下

【注意】試験圧力は、絶対に「設計圧力」を超えないこと!

(2)冷媒配管の気密試験:「窒素ガス」を「試験圧力」まで加圧し、「8時間以上(注)」 放置して漏洩の有無を確認すること。

注:「気密保持時間」には、表―1に示すように、「24時間」という施工要領書を見かけたこともある。これは個人的な見解ではあるが、一般冷温水配管の圧力保持時間に比べ、極端に長いと思う。「ビルマルチ空調」がこれだけ普及している現状を鑑みれば「国土交通省の共通仕様書」などに、明記すべきではないだろうか・・・。

実は、冷媒配管に対する「気密保持時間」が長い理由は、冷媒配管には時間と共に緩みやすい「フレアナット接合」が多用されているからではという人もいる。

表-1 ビルマルチ用冷媒配管の耐圧・気密テスト実施例(参考)

(3)冷媒配管の加圧方法:冷媒配管の耐圧・気密試験実施要領を、参考までに図-2に示しておくが、加圧方法の要点は、一気に「試験圧力」まで加圧しないで、様子を見ながら少しずつ加圧することである。

図-1 冷媒配管の耐圧・気密試験実施要領

1.試験圧力の50%まで加圧したところで、いったん加圧を止めて、「5分間」以上放置し圧力低下のないことを確認する。
2.その後10%ずつ段階的に加圧したところで、その都度加圧を止めて、「5分間」以上放置し、圧力低下のないことを確認する。
3.そのまま「試験圧力」(R410Aの場合4.15MPa)まで加圧する。
4.加圧した状態で「8時間」以上放置(上記注参照)放置して、圧力低下のないことを確認する。

なお、留意すべき点は、「周囲温度」が試験開始時より「1℃」変化すると、圧力が「約0. 01MPa」変化するので、その場合補正する必要がある。

執筆:NAコンサルタント 安藤紀雄
挿絵:瀬谷昌男
  

『建築設備配管工事の基礎講座』の目次

    

第1章 建築設備と建築設備配管

第2章 建築設備用配管材料の種類

第3章 配管の接合方法の種類

第4章 配管工事を支える補助部材

第5章 配管のテストと試運転

第6章 配管に関するトラブル対応

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