ろ紙の種類と折り方
ろ紙とは?
ろ紙とは、小学生の頃、理科の実験などで使用したことがあるかと思いますが、主に液体をろ過する時に使用する紙のことをいいます。ちなみに、ろ過とは液体に混ざっている混合物を分離することで、ろ紙にあいている非常に細かい穴によってろ過します。
なお、ろ過という作業は、私たちの日常生活にもとても密接に関わっています。例えば、コーヒーフィルターを使ってコーヒーを入れる作業もろ過です。また、使い終わった後の油を油かすと分離させる作業もろ過といえます。こういった、ろ過によって液体と固体を分離する際に使用する紙を総称して「ろ紙」といいます。
ろ紙の規格
ろ紙については、JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)によって細かく規定されています。ろ紙には、定性分析用と定量分析用、合計8種類のろ紙があり、ろ紙の種類、寸法、原料、品質、試験方法などが規定されています。
ここでは、寸法と品質の規格について解説します。
定性分析用ろ紙は、ろ過器の形状に合わせて、円形のものと角形のものがあります。円形ろ紙は、直径55mm~600mmの15種類、角形ろ紙は、600×600mmと、560×485mmの2種類があります。
また、定量分析用ろ紙は、円形のみで、直径55mm~185mmの7種類があります。
ろ紙の原料としては、精製した綿繊維を主体としたものと規格されています。詳しくは、αセルロース含量90%以上、銅価1.6以下、pH5.0~8.0であることが規定されています。その他の品質項目として灰分質量、ろ水時間、湿潤破裂強さ、沈殿保持性が規定されています。
定性ろ紙と定量ろ紙の特長
ろ紙の種類は、大きく次の2つの種類に分類されます。
純粋なセルロース繊維で作られ、試料中に存在する物質が何かを調べる分析に使われます。安価で寸法も豊富にあり、研究室や生産現場で幅広く利用されています。
また、前述のJIS規格では定性ろ紙は、ろ水時間などによって以下の4種類が規定されています。ちなみに、ろ水時間とはろ過速度を判断する目安となる基準のことで、水だけを100mlろ過する際にかかる時間のことをいい、秒数で表示します。
- 1種:粗大ゼラチン状沈殿用(80秒以下)
- 2種:中位の大きさの沈殿用(120秒以下)
- 3種:微細沈殿用(300秒以下)
- 4種:微細沈殿用の硬質ろ紙(1800秒以下)
純粋なセルロース繊維で作られたろ紙を塩酸とフッ化水素酸で処理し、灰分含有量を0.01%程度の低レベルにしているため、試料中に存在する金属物質量の分析など広く利用されています。
また、定性ろ紙と同様に、ろ水時間の違いなどにより以下の4種類が規定されています。
- 5種A:粗大ゼラチン状沈殿用(70秒以下)
- 5種B:中位の大きさの沈殿用(240秒以下)
- 5種C:微細沈殿用(720秒以下)
- 6種:微細沈殿用の薄いろ紙(480秒以下)
なお、定性ろ紙は、定量ろ紙に比べると価格が安いという特徴があります。また、灰分含有量についても、定性ろ紙は0.1%程度であるのに対し、定量ろ紙は、寸法ごとに灰分量が規定されていますが、概ね0.01%程度となっています。
- | 定性ろ紙 | 定量ろ紙 |
---|---|---|
特長 | 純粋なセルロース繊維で作られ、試料中に存在する物質を調べる分析に使われます。安価で寸法も豊富にあり、研究室や生産現場で幅広く利用されています。 | 純粋なセルロース繊維で作られたろ紙を、フッ化水素酸で処理し、灰分含有量は0.01%程度の低レベルにしているため、試料中に存在する金属物質量の分析などに広く利用されています。 |
相違点 | 定性ろ紙は、定量ろ紙より価格が安く、灰分含有量が0.1%程度です。 | 定量ろ紙は、定性ろ紙より価格が高く、灰分含有量が0.01%程度です。 |
ロートの口径(Φmm) | 分析用ろ紙の寸法(Φmm)目安 |
---|---|
30 | 55 |
45 | 90 |
50 | 90 |
55 | 110 |
60 | 110 |
65 | 125 |
70 | 125 |
75 | 150 |
100 | 185 |
120 | 240 |
150 | 282または300 |
180 | 360 |
210 | 400 |
250 | 500 |
300 | 600 |
●分析用ろ紙を漏斗で使用される際の寸法選定について
ろ紙を漏斗にのせた際、ろ紙の上部が漏斗の開口部からはみ出さないような寸法を選ばなければいけません。
一般的には、ろ紙の寸法は、漏斗の開口部直径の2倍を超えない規格寸法のろ紙をお使いいただければ、漏斗の開口部からはみ出しません。
ろ紙の折り方について
ろ紙を使用する際の折り方は、その用途に応じて主に次の2通りの方法があります。
四つ折りは、沈殿物の回収などを目的とするときに使用します。
- 図1のように中心線に沿って、二つ折りにします。
- 図2のように直角よりやや傾けて四つ折りにします。
- ロートののせる前に、図3のようにろ紙の端を少しちぎっておきます。
- 大きいほうを円錐形に開いて、ロートにのせます。

ひだ折りは、試料の量が多く、かつ濾液のみを必要とする場合、濾過速度を速くするときに使用します。
- ろ紙を図4の中心線(a~b)で二つ折りにし、さらに(c~o)で四つ折りにして、鳥目をつけます。(写真1)
- 二つ折りに戻して、a、bをそれぞれcに合わせて折り目(d、e)をつけます。(写真2)
- 同様にaをdに、dをcに、bをeに、eをcにそれぞれ合わせて折り目(f、g、h、i)をつけます。(写真3)
- 二つ折りに戻して、折り面を上にし、左右から各々の山折りの間に谷折りを折りたたみながら重ねていきます。(写真4、5)
- 折り終わったら、ロートの上にのせます。(写真6)

