工具の通販モノタロウ > 溶接の基礎講座 > 2-12 ステンレス鋼のミグ、マグ溶接について
溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-12 ステンレス鋼のミグ、マグ溶接について

ステンレス鋼の半自動溶接では、ソリッドワイヤ使用のミグ溶接とフラックスワイヤ使用のマグ溶接が利用できます。それぞれで異なる溶け込みとなり、目的に合わせた使い分けが必要となります。 また、裏波溶接などをティグ溶接で行い、残りの肉盛り溶接をミグ、マグ溶接で行う組み合わせ溶接などにも実用されています。

1)パルスミグ溶接による溶接

ステンレス鋼のソリッドワイヤ使用のミグ溶接では、大電流のスプレー移行の溶接や小電流のパルスミグ溶接が利用できます。中でも、適用できる溶接作業範囲の広い小電流の溶接においては、薄板や全姿勢の溶接において短絡移行となる電圧条件で溶接するパルスミグショートアーク溶接が有効となります。 図12-1が、1.2mm径ソリッドワイヤ使用のパルスミグ溶接で作成した一元化条件設定グラフを利用し、ショートアークの電圧条件で板厚3mmSUS304板のI形片面突合せ溶接を行った結果で、一元化条件設定グラフを利用する条件設定により良好な結果の得られることがわかります。

図12-1 パルスミグショートアーク溶接による板厚3mmSUS304板の片面I形突合せ溶接結果

図12-1 パルスミグショートアーク溶接による板厚3mmSUS304板の片面I形突合せ溶接結果

2)フラックス入りワイヤ使用のマグ溶接

この溶接では、ステンレス鋼の半自動アーク溶接でも、フラックスから発生するスラグの作用で、シールドガスに炭酸ガスやマグ混合ガスを使用してステンレス鋼の半自動アーク溶接が可能になります。 また、ワイヤ溶融金属の移行が粒子移行となりソフトなアークとなること、スラグ作用でビード表面がステンレス光沢を保てること、などから近年ステンレス鋼の溶接に広く利用されるようになっています。

図12-2は、フラックス入りワイヤ使用マグ溶接での適正電圧を、板厚3mmSUS304板のすみ肉溶接で調べた結果です。 いずれの電流条件においても、短絡の無くなる臨界電圧(ET)〜ET+4程度の条件範囲で溶け込み、ビード形状ともほぼ良好な溶接結果が得られています。 なお、この溶接での溶け込み形成は、炭酸ガスをシールドガスに使用していることでフィンガー状とはならず、やや浅くビード幅全体に比較的安定した溶け込みが得られています。

図12-2 フラックス入りワイヤ使用のマグ溶接における適正電圧

図12-2 フラックス入りワイヤ使用のマグ溶接における適正電圧

図12-3は、1.2mm径フラックス入りワイヤ使用のマグ溶接で作成した一元化条件設定グラフを利用し、板厚3〜9mmSUS304板のすみ肉溶接を行った結果です。 板厚が6mm以上の溶接では、継手に必要なVwとなる条件は175A以上といった高い電流条件となり、ほぼ板厚に等しい脚長となるVw条件で十分な溶け込みで外観的にも問題の無い溶接が可能になります。 ただ、板厚6mm以下の材料の溶接では、板厚よりやや大きい脚長となるVw条件で、かつ高電流、高速度側の条件の溶接が必要となります。

図12-3 フラックス入りワイヤ使用マグ溶接による各種板厚ステンレス鋼のすみ肉溶接結果

図12-3 フラックス入りワイヤ使用マグ溶接による各種板厚ステンレス鋼のすみ肉溶接結果

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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