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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-19 各姿勢での被覆アーク溶接作業

被覆アーク溶接による各姿勢での溶接作業においては、プール溶融金属の挙動に加え溶融スラグの挙動を考慮した条件設定、熱源操作が必要となります。

すなわち、必要な溶着金属量は開先形状でほぼ決まり、この金属量から使用する溶接棒の径が決まります(開先内溶接などでは、ウィービングなどの棒操作のやりやすさや母材の確実な溶け込みの確保といった点からは、1ランク細い径の棒の使用が良いでしょう)。 なお、それぞれの棒径および溶接姿勢に対する電流条件は、表17-3から求めます(アークの発生を考慮すれば、できるだけ大きい電流側の条件に設定します)。

1)下向き溶接作業

図19-1は、下向き姿勢での適正な作業状態、溶接状態を示すものです。(a)の作業状態でのポイントは、ホルダーを持つ手のひじを肩の高さまで上げた状態で棒が溶融し短くなるに従って体を前傾させていくことで、溶接棒の保持状態が常に一定に保たれるよう溶接することです。

一方、(b)の溶接状態でのポイントは、棒先端部に対しわずかに離れた位置に明るく輝く高温の溶融スラグが滞留している状態が保たれていることです。例えば、電流が過大あるいは棒の傾きが大きい、アーク長さが長いなどの場合には、 アークの力で溶融スラグが後方に追いやられてプール溶融金属が露出し荒れたビード波形の溶接結果となります。 逆に、電流が過小あるいはアーク長さが短いと、棒先端部に溶融スラグが接触することでスラグの流れが変わりビードの蛇行やスラグ巻き込み、オーバーラップなどの欠陥溶接となります。

  • (a)作業状態
  • (a)作業状態
  • (b)溶接状態
  • (b)溶接状態

図19-1 下向き姿勢溶接での適正な作業状態、溶接状態

2)立向き溶接作業

図19-2は、立向き姿勢での適正な作業状態、溶接状態を示すものです。(a)の作業状態でのポイントは、肩の力を抜きホルダーを持つ手が同じ保持状態で上下に操作できる程度に脇を軽くしめ、溶接棒が溶接面に直角となる姿勢をとります。

一方、(b)の溶接状態でのポイントは、アーク長さは短く、電流を低く押さえて母材をえぐらない程度のプール状態に保ち、棒先端下部のわずか下の位置に溶融スラグが滞留している状態で溶接します。 なお、溶融スラグの流動性が少ない低水素系のような溶接棒ではビード両止端部で確実な止め操作を行うことが必要で、逆にイルミナイト系のように流動性の良いスラグの棒では短い止め操作で溶融金属を薄く積み上げていくような溶接が良いでしょう。

  • (a)作業状態
  • (a)作業状態
  • (b)溶接状態
  • (b)溶接状態

図19-2 立向き姿勢溶接での適正な作業状態、溶接状態

3)横向き溶接作業

図19-3が、横向き姿勢での適正な作業状態、溶接状態です。(a)の作業状態でのポイントは、肩の力を抜き下向きと立向きの中間的な姿勢で、溶接棒が同じ保持状態で左右に平行移動できる姿勢をとります。

一方、(b)の溶接状態でのポイントは、電流は下向きと立向きの中間的な条件で、写真に見られるようにストリンガーに近い操作でビードを必要な幅だけ重ねる多パスの溶接を行います。 この場合、溶融スラグの流動性が少ない棒での溶接はおおむねストリンガーに近い操作で(やや広いビード幅の溶接を行う場合は半自動アーク溶接に示してある少し傾けたグリ操作が必要でしょう)。 一方、流動性の良いスラグの棒での溶接は、細かなノコギリ刃状もしくは少し傾けたグリ操作で溶接します。

  • (a)作業状態
  • (a)作業状態
  • (b)溶接状態
  • (b)溶接状態

図19-3 横向き姿勢溶接での適正な作業状態、溶接状態

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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