電気のおはなし

私たちの生活から切り離せない存在、「電気」。 電気が循環する回路の種類や、電気の測定、電気用品、発電、電源など、 電気にまつわるあらゆる基本的な事項をご紹介していきます。
第2章 電気の測定

2-4 抵抗の測定

○抵抗測定の種類

抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。ところがいろいろな専門分野ではその分野に特化した抵抗測定器が使われていますのでその一部を紹介します。

絶縁抵抗計

電気工事の検査では絶縁抵抗計を使って測定した絶縁抵抗値が、規定値より高いことを確認することが求められています。

電路と大地間の絶縁抵抗測定では、まずプラグを抜くとか遮断器をOFFにして交流電源と電路との接続を切り離します。切り離された負荷側の電線を結合し、絶縁抵抗計のL端子に接続します。絶縁抵抗計のE端子は接地端子へ接続して接地します。ここで測定ボタンを押して表示された値が絶縁抵抗値になります。

電路の電線相互間の絶縁抵抗測定では電路と大地間の絶縁抵抗測定と同様に電路を交流電源と切り離すほかに負荷側の電気機器や電気設備などを電路から切り離しておきます。電路の片側の電線を絶縁抵抗計のL端子、残りの電線をE端子に接続します。ここで測定ボタンを押して表示された値が絶縁抵抗値になります。

図1 絶縁抵抗計

図1 絶縁抵抗計

  • 図2 電路と大地間での絶縁抵抗測定
  • 図2 電路と大地間での絶縁抵抗測定
  • 図3 電路の電線相互間での絶縁抵抗測定
  • 図3 電路の電線相互間での絶縁抵抗測定

接地抵抗計

接地工事を含む電気工事の検査では接地抵抗計を使って接地抵抗を測定し、規定値より低いことを確認することが求められています。

測定に当たっては接地電極とスパイク2本を5~10mの間隔で地中に打ち込みます。接地電極と接地抵抗計のE端子を緑の電線で接続します。真ん中のスパイクとP端子を黄の電線で接続します。残りのスパイクとE端子を赤の電線を接続します。ここで測定ボタンを押して表示された値が接地抵抗値になります。

  • 図4 接地抵抗計
  • 図4 接地抵抗計
  • 図5 接地抵抗計の接続
  • 図5 接地抵抗計の接続

高速抵抗計

一般のテスタは内部の計測回路の処理に時間が必要なので現場のラインでの速度に対応できません。また、ミリオームの低い抵抗値は正確に測定できません。そこで検査ライン用には4点法のミリオーム台の抵抗測定にも対応した高速処理回路内蔵の高速抵抗計が使われています。

体組成体重計

生年月日、性別、身長等の個人データをあらかじめ入力しておき、体重と同時に人体の両足間の電気抵抗を測定し、体重、体脂肪率、筋肉量、BMI値、体水分率などの体組成を表示する機能を有するのが体組成体重計です。

  • 図6 高速抵抗計の例
  • 図6 高速抵抗計の例
  • 図7 体組成体重計の例
  • 図7 体組成体重計の例

つぼ(経穴)発見器

鍼灸治療で電気抵抗の低くなるつぼの位置を正確に探り当て、鍼灸やマッサージ治療などに役立てるのがつぼ発見器です。つぼの位置はメータの振れ具合、LEDの点灯、ブザー音などで知らせます。

図8 つぼ発見器の例

図8 つぼ発見器の例

デジタル水分計

木材、ダンボール、コンクリート材料の水分を測り、数値で表示する測定器にデジタル水分計があります。測定対象(木材・建築資材)のもつ水分-電気伝導率特性と測定対象へテストピンを押しあてて測定した電気伝導率(電気抵抗)より水分量を演算して数値で表示します。

図9 デジタル水分計の例

図9 デジタル水分計の例

○デジタルテスタを使った抵抗の測定例

それではデジタルテスタを使った抵抗の測定例1~4をみていきましょう。

テストリードの各部名称と取り扱い

測定に入る前にテストリードの各部名称と注意点を確認しておきましょう。

テストリードには赤と黒の二本のテストリードの一方には測定対象に接触させるテストピンが、他の一方にはテスタ本体に差し込むプラグがあります。

黒色のプラグはテスタ本体にCOMと表記のある端子に差し込みます。

赤色のプラグは、電流測定の時はAとかmAなどの電流単位の表記のある端子に差し込みます。電圧、抵抗等の測定ではV、Ωなどの単位や記号の表記がある端子に差し込みます。

一般にテスタで測定できる最高電圧は1000Vになっています。しかし、テストピンに着脱式のテストピンキャップを着装しているときの最高電圧は600Vになりますので注意が必要です。

赤のテストピン先を測定対象の+部に、黒のテストピン先を-部に接触させて測定させます。抵抗測定ではテストピンの極性を気にする必要はありません。

50~100g前後の力でテストピン先を測定対象にあてがいます。抵抗測定ではテスタ本体から電流を流して測定しているので安定した測定値を得るにはしっかりと力を加えて測定することがポイントになります。

図10 テストリード

図10 テストリード

図11 テストリードの各部名称(SANWA TL-23aの場合)

図11 テストリードの各部名称(SANWA TL-23aの場合)

測定例1 固定抵抗器の誤差範囲の測定

Ωの表示がある位置にテスタのレンジを切り替えておきます。

100個入りの1KΩ固定抵抗器より10個を取り出して測定してみました。安定した状態で繰り返し測定できるように写真に示すようにブレッドボードに差し込んで測定しています。

ブレッドボードの右端の穴は縦ラインで共通に接続されています。固定抵抗器の片側のリード線をこのラインの穴に差し込みます。他方のリード線は、横方向に共通な穴に差し込みます。

黒側のテストリードのテストピンは、縦の共通ラインの穴に差し込んだ裸電線で固定して接続します。

赤側のテストリードのテストピンを横方向の穴に差し込まれている抵抗器のリードに順番にあてがって測定していきます。10個の抵抗器の測定結果を次の表に示します。

表12

単位 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10
Ω 986 985 985 986 988 985 985 986 987 986

985~988Ωの範囲内に収まっています。1KΩの抵抗器では10Ωが1%になりますので-1.5%以内に収まっていることがわかりました。

  • 図13 固定抵抗器の測定風景
  • 図13 固定抵抗器の測定風景
  • 図14 ブレッドボードの製品例
  • 図14 ブレッドボードの製品例

測定例2 直流モータの巻き線抵抗の測定

消しゴムがモータ回転軸の先端についたイレーサを分解してモータを取り出してモータの巻き線抵抗を測定してみました。巻き線抵抗は1.3Ωと測定されました。 消しゴムを押し付けて消したり、削ったりするとモータの回転が遅くなります。このような状態になると巻き線抵抗の値と電池の電圧3Vからオームの法則で求まる電流値に近づいていくので2A以上の電流が直流モータに流れることになります。

測定例3 鉛筆の芯の抵抗値の測定

長さ13cmになっている鉛筆の両端にテストピンをあてて抵抗値を測定し、20.5Ωと測定されました。鉛筆の抵抗値は長さに比例しまますのでこの鉛筆の抵抗値は、1.6Ω/cm×長さで求めることができます。

測定例4 墨の測定

書道用墨の小片があったので測定してみました。20Ω前後で表示されましたが表示が安定しませんでした。

電流を流して測定しているので墨の内部で何らかの変化が生じているのかもしれません。

図15 抵抗測定に使用した鉛筆、墨、直流モータ

図15 抵抗測定に使用した鉛筆、墨、直流モータ

執筆:常深 信彦

『電気のおはなし』の目次

第1章 電気回路

第2章 電気の測定

第3章 回路計

第4章 電気用品

第5章 発電

第6章 電源装置

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