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溶接の基礎講座
ものづくりにおける接合方法の1つに、「溶接」があります。
本連載では「溶接」について、金属が接合するメカニズムから溶接の種類、また溶接の仕方まで、現場で使える知識をご紹介していきます。
第2章 溶接方法と溶接材

2-15 トーチろう付け作業とアークろう付け作業

1)トーチろう付け作業における作業ポイント

人の作業状態がろう付け結果を左右する手動トーチろう付け作業では、(1)接合部の清浄及びフラックスの塗布、(2)接合部と周辺の均一加熱、(3)フラックスが溶融して活性状態となる適正ろう接温度で、ろう材添加、 (4)接合面全体にろう材が均一に行きわたるための加熱操作、(5)適正ろう付け状態の確認と加熱の停止、ろう付け部の冷却、(6)残留フラックスの除去と接合部の清浄、の手順で作業を行います。

これら一連の作業での最重要ポイントは、接合部を加熱オーバーさせないことです。そのために、作業前、塗布しておくフラックスの水分を少なくし、ややネバい状態にしておきます。 これにより、溶けて活性になった液体状態のフラックスは接合部の温度上昇を抑え、適正ろう付け温度状態を長く保たせるのです。図15-1及び図15-2が、こうしたフラックスの温度維持作用とその効果を実験的に調べた結果です。

図15-1 フラックスの温度維持作用

図15-1 フラックスの温度維持作用

図15-2フラックス濃度がろうの広がりに及ぼす影響

図15-2フラックス濃度がろうの広がりに及ぼす影響

図15-1は、使用フラックスのフラックス濃度(一般にペースト状のフラックスでは、フラックスを水で適当な粘性に薄めた状態で使用され、この使用する時点での水とフラックスの配合割合)の差による加熱時の母材表面の温度上昇の違いを測定した結果です。 図のように母材のみを加熱した場合に比べフラックスを使用した場合は、母材の温度上昇率が小さくなっています。 加えて、フラックス濃度が濃くねばい状態になるに従い、ろう接可能な温度時間幅が広くなり少々の加熱の不連続が生じてもオーバーヒートとなる危険性が少なく、適正なろう付け作業がやりやすくなることを示しています。

図15-2が、その効果を、板厚3mmの材料の加熱中心位置に1gの銀ろうと1ccの各種フラックス濃度のフラックスを置き、同一火炎条件で裏面から加熱した時のろう材の広がり状態を示したものです。 図から明らかなように、フラックス濃度が高くねばくなるにしたがい、ろう材の母材に広がっていく傾向が顕著に認められます(それだけ、ろう付け作業がやりやすく、良好なろう付け結果が得られやすくなります)。 これは、熱源を一点に国定し、加熱位置を中心に局部的な温度上昇が発生する状況にしたとしても、フラックス濃度が高く活性なフラックス層が十分に得られるならばこの加熱中心位置での温度上昇が押えられ、母材のろう付け可能な温度城が広がったためで、 先に述べたフラックスの温度維持作用が有効に作用したことを示しています。

このように、従来、フラックスといえば母材の清浄作用やろう材添加時期の目安作用のみに使用されてきましたが、母材の加熱状態の制御による適正ろう付け温度保持といった作用をも有していることがわかり、ろう付け作業をやりやすくするのに重要なポイントとなることがわかります。

2)アークろう付け作業における作業ポイント

エバジュウル系ろう材を使用し、フラックスなしのろう付けが可能なアークろう付け作業に関しては、 (1)ティグ溶接の場合では、開始部の母材をわずかに溶かした後、ろう材が母材面になじんでいく状態を保ちながらアークをろう材に向けて作業を進めます、 (2)ミグ溶接の場合(ミグろう付け)では、適正なろう付け結果が得られる溶接条件を、作業前に十分に確認しておくことが必要です (図15-3が、エバジュウル系ろう材を用いたティグ溶接によるアークろう付け結果です)。

図15-3 アークろう付けによる接合結果

図15-3 アークろう付けによる接合結果

執筆: 溶接道場 安田 克彦

『溶接の基礎講座』の目次

第1章 溶接の基礎

第2章 溶接方法と溶接材料

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