工具の通販モノタロウ 切削工具の基礎講座 切削工具の切れ味の評価

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第1章 切削工具の基礎講座

1-4 切削工具の切れ味の評価

私たちが日常的に使用する包丁やカッター、ナイフなどの刃物の切れ味は、「刃先の鋭さ」によって評価されます。 たとえば、刃先が摩耗した(丸まった)包丁でトマトを切ると、トマトがうまく切れずにつぶれてしまいますが、刃先が鋭く尖った包丁でトマトを切ると、きれいに切れます。このように、刃先の鋭さが切れ味の評価基準になり、鋭いほど切れ味が良いという評価になります。

一方、金属加工で使用される切削工具の切れ味は、一般的な刃物と同様に、「刃先の鋭さ」に加えて、もう一つ切れ味を評価する基準があります。それは「切りくずの厚さ」です。切削工具の切れ味は切りくずの厚さが評価基準で、切りくずが薄いほど切れ味が良く、切りくずが厚いほど切れ味が悪いと評価します。

切削工具を使用して金属を削ると、削り取った箇所は「切りくず」となって排出されます。金属加工で排出される切りくずは高温になります。なぜ、切りくずは熱くなるのでしょうか?

切削工具で金属を削り取ろうとすると、削り取る部分の金属組織が変形し、切削工具の刃先と金属の接触点は約600~1000℃に達します。これは「はりがね」をくねくねと曲げると、曲げている部分が熱を帯びるのと同じで、金属は変形すると熱を発生し、変形の度合いが大きいほど発生する熱は高くなります。つまり、切削工具が金属を削り取るとき、削り取られる部分の金属が変形するため熱が発生し、この熱が切りくずに伝わり、切りくずは高温になります。 そして、金属の変形の度合いによって切りくずの厚さも変わり、変形が大きいほど切りくずは厚く、変形が小さいほど切りくずは薄くなります。つまり、切りくずの温度と厚さは比例します。

ここで考え方を変える(パラダイム・チェンジ、逆から考える)と、切りくずが厚いほど切削熱が高く、金属の変形が大きいということができます。反対に、切りくずが薄いほど切削熱が低く、金属の変形が小さいということができます。 つまり、切りくずの厚さによって金属の変形度合いを置換評価できるのです。切りくずが薄いほど金属の変形が小さく、切削熱が低温になるため、金属に余計なストレスが生じず、本来金属が持つ性能のまま形状をつくることができます。

切りくずが薄いほど金属の変形が小さい切削、言い換えれば、薄い切りくずを排出できる切削工具が良い切削工具(切れ味がよい切削工具)ということになります。このように、切削工具は「刃先の鋭さ」に加えて、「切りくずの厚さ」も切れ味の評価基準になります。

包丁の切れ味は「刃先の鋭さ」で評価する

包丁の切れ味は「刃先の鋭さ」で評価する

針金をくねくね曲げると、変形部は熱くなる

針金をくねくね曲げると、変形部は熱くなる

金属は変形すると熱が発生する

金属は変形すると熱が発生する

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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