腐食の速度
腐食速度とは
腐食速度とは、金属が一定時間あたりにどのくらい腐食したのかを示す指標です。腐食の進行度は、質量や厚みがどのくらい減少したかによって計ります。腐食の種類によっては侵食が局部的に進み、厚みの減少がわかりづらいため、質量の減少量を基準とするのが一般的です。
腐食速度は主に「mdd」で表されます。「mdd」は体積当たりの質量の減少量を示す単位です。1日に1d㎡あたり、何mgの質量が減少したかを計測することで求めることができます。近年は国際単位で認められた「mmd」の使用が推奨されていますが、1年間に何mmの厚みが減少したかが直観的にわかりやすい「mm/y」も広く用いられており、使用頻度が高いです。
ただし、「mm/y」の単位を使用するときは、必ず試験期間を確認する必要があります。すべての金属が、一定の速度を保って腐食するわけではないからです。時間の経過によって、ゆるやかな曲線を描いて速度が減少することが多いとされています。たとえば、5年間の実験で0.5mmの減少が認められ、0.1mm/yという数値が出たとしても、1年目に0.1mm減少するということにはなりません。実際には、1年目の減少量がもっとも大きく、5年目にはほとんど減少が止まっている可能性が高いと考えられます。「mm/y」はあくまで目安として利用するとよいでしょう。
腐食速度の決定要因
金属には、腐食しにくいものと、腐食しやすいものがありますが、同じ金属であっても環境や状態によって腐食の進み方が変化します。たとえば、水中にある鉄や鋼の腐食速度を決めるのは、溶存酸素の多寡です。周囲の酸素が多いほど、金属表面で起こる酸化還元反応が活発になるので、腐食も速くなります。
ある程度まで反応が進むと、腐食によって出来た酸化物で表面がくまなく覆われ、それ以降の侵食が著しく遅くなるケースもあります。中性環境におけるアルミニウムや亜鉛がそうです。なお、酸性またはアルカリ性の環境下では、酸化物でできた皮膜が溶け出してしまうので、pHによって腐食速度が決まります。
代表的な腐食速度
自然海水の中にある鋼が、数年後に示す腐食速度は0.1mm/yです。腐食分野ではこれを標準的な腐食速度としています。腐食速度が0.1mm/yを下回るものは、耐食性が高い材料とみなしてよいでしょう。
ステンレス鋼の腐食速度は1μm/y以下と非常に低く、腐食に強い金属の代表格です。しかし、すきま腐食や孔食、応力腐食割れが起きると、急速に腐食が進行し、ひどいものでは10mm/yを超えることもあります。局部的な腐食は腐食速度で予測が難しいため、注意が必要です。
腐食の進み方は、金属の性質や周囲の環境によって変化します。腐食速度は耐食性の目安として活用できるので、腐食速度を正しく理解し、腐食の危険性を把握することで安全性を高めましょう。