テスターの基礎講座
2-5 電圧の測り方
■アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。しかし、お馴染みの「零位調整」を、測定するときには必ず確認してください。もしも、アナログメーターの零位置がズレているようであれば、零位調整器を回して正しい位置に調整します。また、アナログテスターでは、電圧測定モードと電圧レンジがセットになっていますので、電圧を測定する最適なレンジのファンクションを選択します。たとえば、電池(単3×1本)の電圧(約1.5V)を測定する場合には、3V以下の直流電圧であることが解りますので、「DCV 3レンジ」を選びます。次に、赤のテスト棒を電池の+へ、黒のテスト棒をマイナスへ押し当て測定します。このとき指針は1.5V付近を示します。
■また、電池(単3×2本)と金属皮膜抵抗器(240Ω)を使った簡単なLED点灯回路の電圧測定では、3V以上の直流電圧であることは解りますので、「DCV 10レンジ」を選択します。直列に接続した2本の電池電圧は、3V付近を示します。次にLEDの電圧を測定してみます。赤のテスト棒をLEDの長いリード(電池の+に接続側)へ、黒のテスト棒を短いリード(電池のマイナスに接続側)へ押し当て測定します。「3-9 ダイオードの測定」で詳しく解説しますが、赤色LEDであれば、約1.8Vとなります。3V以下の直流電圧であることが解りましたので、テスト棒を測定対象から離してから「DCV 3レンジ」を選択します。最後に、赤のテスト棒を抵抗器のリード(電池の+に接続側)へ、黒のテスト棒を反対のリード(電池のマイナスに接続側)へ押し当て、抵抗器の電圧を測定します。電池(単3×2本)電圧[V] - LED電圧[V] = 3[V] - 1.8[V] = 1.2[V]付近を指針が示すはずです。このように、電圧は測定対象と並列に測定することになります。電圧値が不明のときには、大きいレンジから確認し最適なレンジで最終測定することをお勧めします。また、電圧レンジの切り替えとOFFにするときには、テスト棒を測定対象から必ず離してから行ってください。これは大切なテスターを壊さない秘訣です。
■デジタルテスターで電圧測定を行う場合にも、ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。また、デジタルテスターでは、電圧レンジは自動で判断され単位も自動表示されます。そのため、安定した表示になるまで少し待ってから値を読み取る必要があります。たとえば、電池(単3×1本)の電圧(約1.5V)を測定する場合には、「DCVレンジ」を選びます。アナログテスターと同じように、テスト棒を押し当て測定します。このとき約1.5V(レンジにより表示桁数は異なる)が表示されます。さらに、レンジホールド機能を持っているテスターでは、手動で単位と小数点位置を設定することが可能です。この機能により、電圧を測定するために最適な、桁数をできるだけ多く表示するレンジを選択することができます。たとえば、1.612Vのように桁数を多く表示するレンジを選ぶことができるのです。また、アナログテスター同様、電圧レンジの切り替えとOFFにするときには、テスト棒を測定対象から必ず離してから行ってください。これが大切なテスターを壊さない秘訣です。
■交流電圧でも直流電圧と同じように、電圧は測定対象と並列に測定します。たとえば、壁のコンセントなどの家庭用電源は、100V以上の交流電圧であることが解りますので、アナログテスターでは「ACV 120レンジ」を選びます。また、デジタルテスターでは「ACVレンジ」を選択します。ただし、感電や大切なテスターを壊さないように注意してください。
【参考文献】
内田 裕之、小暮 裕明 共著『みんなのテスターマスターブック』オーム社、2015年11月20日(第1版第2刷)
三和電気計器『CX506a MULTITESTER 取扱説明書』(13-1405 2040 2040)
三和電気計器『PC710 DIGITAL MULTIMETER 取扱説明書』(04-1405 5008 6010)
『テスターの基礎講座』の目次
第1章 テスターの概要
-
1-1テスターとは何をするもの?多くの人は、テスターと言われると、店頭などで化粧品の特長や使用性を体感するためのお試し用店頭見本や、コンピューターのソフトウェアなどを動作検証する人を思い浮かべるのではないでしょうか。
-
1-2テスターで何がわかるの?テスターで測れる基本的な値は、抵抗(導通)、電圧と電流です。いったい、それらを測定して、電気・電子回路の何がわかるのでしょうか。
-
1-3テスターの種類テスターには、どのようなものがあり、何が測れるのでしょうか。まず、表示方式の違いでは、アナログメーターで表示するアナログテスターと液晶画面(LCD)で表示するデジタルテスターがあります。
-
1-4アナログテスターの仕組みと構造アナログテスターは、測定値を「アナログメーター」で表示します。じつは、このアナログメーターが「直流電流計」そのものなのです。
-
1-5デジタルテスターの仕組みと構造デジタルテスターは、測定値を「液晶ディスプレイ(LCD)」などに表示します。アナログテスターは「直流電流計」でしたが、デジタルテスターは「デジタル直流電圧計」なのです。
第2章 テスターの使い方
-
2-1テスター各部の名称と役割スマートフォンなどは、説明書を読まなくとも操作ができます。それは、スマートフォンで何をするのかが、解っているからできることです。
-
2-2テスト棒の使い方アナログテスターもデジタルテスターも、赤と黒のテスト棒をテスター本体の測定端子に差し込み使用します。
-
2-3テスターの測定値の読み方アナログテスターでは、測定の前に零位調整とゼロオーム調整が必要なことは理解いただけたかと思います。
-
2-4抵抗(導通)の測り方アナログテスターで導通検査や抵抗測定を行う場合には、スポーツと同じようにウォーミングアップ(準備体操)が必要となります。
-
2-5電圧の測り方アナログテスターで電圧測定を行う場合には、前節の導通検査や抵抗測定とは異なりウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-6電流の測り方アナログテスターで電流測定を行う場合には、前節の電圧測定と同様ウォーミングアップ(準備体操)は必要ありません。
-
2-7アナログ向きの使い方デジタルテスターは、測定モードによりテスト棒を当てたときに数字が細かく変化します。そのため、安定した表示に定まるまで少し時間がかかります。
-
2-8デジタル向きの使い方デジタルテスターで測定を行う場合に、アナログテスターようなウォーミングアップ(零位調整やゼロオーム調整)は必要ありません。
-
2-9機種によって違う測定機能これまでは、テスターの基本機能である電圧・電流・抵抗の測定について、テスターの仕組みと構造を交えて解説してきました。
-
2-10テスターでやってはいけないことアナログテスターとデジタルテスターに共通する最大の御法度は、ファンクションを電流測定モードにして電圧を測ることです。
第3章 テスターの測定方法
-
3-1導通の測定デジタルテスターには、導通検査ファンクションを持っているものが多くあります。
-
3-2人体の抵抗測定人体の抵抗を測ってみたことはありますか。
-
3-3電池の電圧測定「1-2 テスターで何がわかるの?」では、電池が消耗していると、豆電球が明るく点灯しないことを説明しました。
-
3-4家庭用電源の電圧測定家庭用コンセントに供給されている電気は、交流電圧100Vの電源です。
-
3-5カーバッテリーの電圧測定電気自動車やハイブリッドカーなど、車の進化とともにカーバッテリーも大きく進化を遂げています。バッテリーはエンジンの始動など、ランプ系(ヘッドライト、ブレーキランプなど)、電装系(パワーウインドウ、ワイパー、カーオーディオやカーナビなど)に電力供給をしています。
-
3-6抵抗器の測定電子部品である抵抗器には色々な種類があります。
-
3-7コンデンサーの測定日本ではコンデンサー、欧米ではキャパシターと呼ばれている電気を充放電する電子部品で、色々な種類があります。
-
3-8コイル・トランスの測定コイルはインダクターとも呼ばれ、線材をらせん状にクルクルと巻いた構造をしています。
-
3-9ダイオードの測定ダイオードを測定するためには、その特性を知っておく必要があります。
-
3-10バイポーラトランジスターの測定最近の電子機器には、トランジスター等を内部に形成したICなどのモジュールが多く搭載され、3本足のトランジスターは見かけなくなりました。
-
3-11電界効果トランジスターの測定「3-10 バイポーラトランジスターの測定」では、動作に関わるキャリアが2種類あるバイポーラトランジスターをご紹介しました。
第4章 テスターの活用法
-
4-1ケーブルの断線チェックケーブルには、電源ケーブル、ステレオミニプラグケーブル、USBケーブルなど多くの種類があります。
-
4-2電池ボックスのチェック電子機器には電源が必要不可欠ですので、色々な電池が使われています。
-
4-3ACアダプターのチェックACアダプターのチェックをする場合には、短絡することもあるため、ケーブルを前後左右に折り曲げることをお勧めしません。
-
4-4USB機器のチェックUSBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の略称で、コンピューターに周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つです。
-
4-5スピーカーとイヤホンのチェックスマートフォンやパソコン、テレビやオーディオ機器の音の出口として、スピーカーやヘッドフォン、イヤホンなどがあります。ラジオを聞くにも欠かせない、音の出口となる部品の一つです。
-
4-6オーディオアンプのチェック電子工作には欠かせない、あると便利なのがオーディオアンプです。
-
4-7一石低周波増幅回路のチェックラジオは方式にもよりますが、同調・高周波増幅・中間周波増幅・検波・低周波増幅・周波数変換・局部発振など、高周波から低周波までの多くの回路から構成されており、チェックするにはそれなりの知識と経験が必要です。
-
4-8さらにテスターを活用する方法(LEDチェッカー)LEDは色々なところに利用されていて、もはや生活には無くてはならない電子部品のひとつです。
-
4-9さらにテスターを活用する方法(磁気チェッカー)磁石は身近にあり多くの電子機器にも利用されています。
第5章 使用上の注意点、トラブル対応
-
5-1初心者が扱うと危険な測定大切なテスターを壊す最大の原因は、直流電流測定モードで電圧を測ってしまうトラブルです。
-
5-2テスターの故障確認方法テスターも電子機器ですので、使用していると「測定値がおかしい」、「指針が振れない」、「電源が入らない」などの故障をすることが当然あります。
-
5-3テスターとオームの法則「オームの法則」とは、電圧(V)[V] = 電流(I)[A]×抵抗(R)[Ω]の関係式です。
-
5-4テスターの保守方法テスターは測定器ですので、安全と確度の維持のために1年に1回以上は、保守と校正の点検を行うことをお勧めします。
-
5-5テスターの管理方法テスターは、測定に使っているとパネルやケースがどうしても汚れてきます。その汚れを落とそうと、シンナーやアルコール等で拭くことはしないでください。