加工現場の手仕上げ作業の勘どころ

ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第6章 穴あけ作業

6-1 卓上ボール盤の使い方

穴加工をする加工方法には、ボール盤やマシニングセンタを用いる方法、放電加工やレーザ加工などさまざまな加工方法がありますが、手作業で穴あけ作業を行なうためには、卓上ボール盤が欠かせません。 ここでは、卓上ボール盤でハイスのツイストドリルを使用した一般的な穴あけ作業について述べます。

6.1 卓上ボール盤の使い方

ドリルと呼ばれる工具を用いて穴あけ加工を行う機械をボール盤といいますが、ボール盤には加工目的や形式の違いで大小さまざまな種類があります。ここでは、作業台の上に取り付けて手作業で使用する小型の卓上ボール盤について述べます。図6-1に卓上ボール盤を示します。 卓上ボール盤の大きさはテーブルの大きさ、テーブルまたはベースの上面から主軸端面までの距離、主軸穴のモールステーパー番号、穴あけが出来る最大直径などで表されます。

図6-1 卓上ボール盤

図6-1 卓上ボール盤

卓上ボール盤はドリルの長さ、工作物の大きさ、穴の深さによってテーブルの高さを調節します。その方法は、図6-2aに示すテーブルの後ろにあるクランプ(1)をゆるめ、図6-2bに示すテーブル横のハンドル(2)を回すとラックによって上下に動くので位置を決めます。 また、テーブルもコラムを中心にして旋廻できるため、加工に適した位置を決めてクランプを締めます。 なお、円テーブルの場合には図6-2bのテーブルの下にあるクランプ(3)を緩めると、テーブルが回転できるためテーブル上の溝の位置が任意に選べます。要求された寸法の深さを得るにはドリルの先端を工作物に当て図6-3のメモリを読み取りながら深さを決めます。 また、ストッパーを調節して深さを決めるボール盤もあります。

図6-2 ボール盤のクランプ

図6-2 ボール盤のクランプ

図6-3深さのメモリの読み取り

図6-3深さのメモリの読み取り

ドリルをチャックに固定する時には、ゴミや切りくずなどをよく取除いてからチャックハンドルで図6-4のようにしっかり締めます。しっかり締めないとドリルがチャックの中で空回りしてドリルのシャンクに傷がつくととともにチャックの内部が傷むので注意を要します。

図6-4 ドリルの取り付け

図6-4 ドリルの取り付け

ドリル加工ではドリル径や工作物材質によってドリルの回転数を変えますが、卓上ボール盤では、回転数の変換はプーリのベルトを掛け替えて行う機種が一般的です。ベルトの掛け替えはモータ側のプーリをハンドルで手前に移動させて図6-5のようにベルトの張りを緩め、大きいプーリの方からはずします。 掛けるときは小さいプーリの方に掛けた後、大きい方のプーリに掛けてモータ側プーリを移動してベルトを張ります。ベルトの張りは、緩みすぎると動力の伝達が弱く、張り過ぎるとモータをいためることがあるので注意する必要があります。

図6-5 ベルトの掛け替え

図6-5 ベルトの掛け替え

執筆: 執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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