工具の通販モノタロウ 加工現場の手仕上げ作業の勘どころ ねじ立て作業に使用する工具(タップ、ダイス)

加工現場の手仕上げ作業の勘どころ

ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第8章 ねじ立て作業

8-1 ねじ立作業に使用する工具(タップ、ダイス)

1.タップの各部の名称

タップには、ねじ溝を切削しながら加工する切削タップと塑性変形でねじを作る転造タップがあります。いずれもねじ部とシャンク部(柄部)とで構成されています。図8-1に切削タップの形状を示します。

切削タップの形状

図8-1切削タップの形状

1) ねじ部

ねじ部は先端がテーパとなっている食付き部と完全ねじ部とで構成されています。食付き部は下穴にタップの先端が食付いて切削を行うところです。食付き部の後に完全ねじ部の多くの切れ刃があります。この切れ刃の全部が切削に関わるとトルクがかかり作業も大変となることから、完全ねじ部はタップの長さ100mm当たり0.05~0.1mmぐらいのバックテーパがついています。加工行う切れ刃の面をすくい面と呼び、切れ味に影響を与えます。切りくずはこの面を擦過します。切れ刃から溝部までのヒール部につながる円弧状の部分をランドと呼び、その幅をランド幅と呼びます。ランドはねじ立てをスムーズに行う役割を担っています。ランドには加工面と工具の不必要な接触を避けるための逃げが形成されています。タップの溝は切りくずを排出する役割を担います。形状には直溝型、ねじれ溝型などがあり、溝数は2溝、3溝、4溝が一般的です。

2) シャンク部

タップのシャンクはストレートで頭部は四角になっており、ハンドタップはこの部分にタップハンドルを取り付けて作業を行ないます。図8-2にタップハンドルを示します。

タップハンドル

図8-2タップハンドル

2.タップの種類

タップは材質や形状の違いによりいろいろな種類がありますが、一般に行なわれている手作業のねじ立てには、ハンドタップが使用されます。図8-3にハンドタップを示します。一般にハンドタップは、先タップ、中タップ、上げタップの3本で一組となっており、食付き部のねじ部は先タップから9山、5山、1.5山のものが多く使用されています。この一組の各タップが等径のものを等径タップと呼び、径が使用順に大きくなるのを増径タップと呼ばれます。

ハンドタップ

図8-3ハンドタップ

また、刃溝の形状により、図8-4に示す 直溝タップ、スパイラルタップがあります。直溝タップは、刃先強度が高く再研削も容易で広く使用されています。スパイラルタップは切りくずをシャンク側に排出しやすく、下穴に食付きやすいなどの特徴がります。

直溝タップ、スパイラルタップ

図8-4直溝タップ、スパイラルタップ

3.ダイス

ダイスはおねじを立てる工具で、ダイス用ハンドルに取り付けて使用します。図8-5にダイスとダイス用ハンドルを示します。なお、図8-5のダイスに見られるように割りが施されており、割りダイスと呼ばれます。すり割りの開閉によってねじ径が調整でき、生産現場では広く使用されています。

ダイスとダイス用ハンドル

図8-5ダイスとダイス用ハンドル

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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