工具の通販モノタロウ 加工現場の手仕上げ作業の勘どころ きさげ作業の種類と仕上げ面の性状

加工現場の手仕上げ作業の勘どころ

ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第2章 きさげ作業

2-2 きさげ作業の種類と仕上げ面の性状

1.平面のきさげ作業

図2-6のような平面を得るには、摺り合わせ定盤(当たり見定盤)とを工作物表面と摺り合せ、目視できる凸部(当たり)だけを平きさげで削り取り、それを何度も繰り返して仕上げます。 きさげ作業は平面を得るだけでなく接合面の剛性や振動減衰性を得るために、平面度や粗さ、角度の形成なども行ないます。また、部品の高さ寸法を調整する事もきさげで行われます。 技能検定の機械組み立て仕上げの実技ではきさげによって0.05mm以内の隙間を製作します。平きさげは日本の場合、長い木製の柄の尻を腰で押す腰きさげ作業が主流です。西洋では短い柄または金属の柄を手で押す腕きさげ作業が行われています。 きさげ作業の最終工程として場合によっては装飾を目的に、三日月模様や市松模様などのキサゲ模様を付けて加工される事もあります。

図2-6 コラム底部の平面のきさげ面

図2-6 コラム底部の平面のきさげ面

2.案内面のきさげ作業

工作機械の図2-7のような滑り案内面はきさげで仕上げられます。この作業は、移動側 (テーブル等)の運動の真直を得ることや潤滑性を与えて適度な摩擦係数による長期の寿命を保証するためです。べッド側の案内面にはテーブルをスムーズに動かすために、あらかじめテーブルが移動した時の変形量を見込んで加工する傾向付けが行われます。 門形で大型のベッド研削盤では製品となる研削盤のベッドをテーブル(X軸)と砥石軸(Y軸)を上下に連動させて所定の傾向(凹凸形)に研削仕上げします。テ ーブル側の案内面はその面を基準にして共摺りによってきさげで仕上げされます、その間、図2-8の精密水準器を用いて、何度も測定ときさげを繰り返し所定の形状を得ます。 なお、ベッド面の摩擦係数を調整するため、凹形の油溜まりを形成しますが、そのためのきさげには超硬のスローアウェイチップを取り付けた図2-9の電動きさげが使用されます。

図2-7 工作機械の滑り案内面

図2-7 工作機械の滑り案内面

図2-8 精密水準器

図2-8 精密水準器

図2-9 電動きさげ

図2-9 電動きさげ

3. 静圧軸受の内面のきさげ作業

図2-10に示す静圧軸受の内面のきさげには図2-11のようなささば(笹葉)きさげが用いられます。 回転軸を基準として、固定側の内面を適度な当たりと、潤滑油の保持を持たせるための凹凸を付けます。片手で柄を握りひねりながら押します。 もう一方の手は刃部を上から押さえながらひねりを助けて円筒状、またはテーパー状の軸受の内面を削り仕上げをします。

図2-10 静圧軸受

図2-10 静圧軸受

図2-11ささば(笹葉)きさげ

図2-11ささば(笹葉)きさげ

4.案内面のきさげ作業

きさげ面の摩擦係数と寿命を向上するために、適切な面性状が要求されます。きさげはアナログ的な手作業ですが、数値で表現する努力が以前から行われています。表現方法として

1)坪当たり(PPI=Point per Inch)

1平方インチの当たりの接触点数で表します。20点から40点が適正で高速な移動体ほど当たりは粗にします。

2)パーセント当たり(POP=Percentage of Point)

1平方インチの当たりの接触面積率を表します。工作機械では40から50%位が最適とされています。

3)当たりの高さ(HOP=Height of Point)

当たり周辺深さ(DOS=Depth of Surrounding)とも呼ばれます。正確な測定法が確立しているわけではありませんが、5から10μmとされています。 図2-11のようなささば(笹葉)きさげは20 PPI、40% POPのイメージです。当たり高さと坪当たり、パーセント当たりの組み合わせにより、油溜まりとしての性能、寿命を調節する事が出来ます。

図2-12 きさげされた面の当たり

図2-12 きさげされた面の当たり

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

目次をもっと見る